ウルフヘッドの誕生


 ヘルドアから這い出た後、灰色狼は疲れきってジュジュの森の岩場に横たわっていた。己の身に沼蛭の鋭い口が迫っていることなど気づくすべもなく…。灰色狼を沼蛭が襲おうとしている――狼を救うべく、娘は走り出した。しかし、沼蛭の尾の一撃でスミアは跳ね飛ばされた……。
 沼蛭が娘を跳ね飛ばす音で、灰色狼は目覚めた。そして、気絶している人間の娘といまや口を大きく開いている沼蛭を見比べて狼は悟った。跳ね飛ばされた娘が自分を救おうとしていたことを。そして、今や沼蛭が自分の恩人を狙っていることを。助けなくては…。
 沼蛭に跳ね飛ばされた娘はサングール国の王女スミア、そしてこの灰色狼は、後にウルフヘッドと呼ばれるこの物語の主人公である――。

 『ウルフヘッドの誕生』は『ウルフヘッドシリーズ』の上巻です。
 上巻の18番までは、オリエンテーション(冒頭でのガイダンス)方式というこれまでのゲームブックにない方式になっています。通常のゲームブックでは、冒頭で一通りルール説明が終わるとすぐに本文に入ります。しかし、これでは最初のうちはあまりルールが飲み込めず、要領の悪い進め方をする場合が少なくありません。そこで林氏は、一通りのルールを実際にゲームを進めながら説明していくオリエンテーション方式に乗り出しました。これならば、項目番号を読み進めていくうちにだんだんルールやゲームの要領が分かってくるわけです。では、オリエンテーションが終わった後にルールをもう一度確認したい場合はどうすればよいでしょうか。その答えは巻末の「ルール概要」にあります。最初にDDという記号の説明もありますので便利です(実は、私がFFシリーズやGDFシリーズのルール概要をまとめるときのDDの凡例は『ウルフヘッドシリーズ』を参考にしました)。このオリエンテーションゲームの途中で、ジュジュの森の中で黒小人と出会いますが、狼と人の姿では黒小人の反応も違って来ます。自分が今狼か人かで状況を見極めなければならないということですね。この教訓はエムル村に入るときにも役に立ちます。無論狼の姿で入ってはいけません。
 オリエンテーションゲーム後はヘルドア湿原一帯が舞台となりますが、上巻は恐ろしいほど「順序」が大切です。ある謎を解かないと次の謎の手がかりはつかめず、その手がかりはまた次の手がかりへと、つながりが非常に長いのです。例を挙げると、豹の魔女と出会わない限りはスミアに瓜二つの小妖精タイタニアを仲間にすることは出来ません(無論、この間にも関門はあります)。また、ルーイーの村で狼の姿でスラッグと戦わないと、クリア必須アイテムである“悪魔の笛”は手に入りません(この間にも流れはあります)。上巻クリアまでの一連のつながりについては研究室にて。
 上下巻で言えることですが、狼に変身する回数が3回までと限られているのは少し厳しいです。確かに、戦闘をはじめ、力による解決においては狼の方が圧倒的に有利です。変身する回数制限を解除してしまってはゲームの難易度が低くなりすぎてしまうというのもあるかもしれませんが、先のルーイーの村でのスラッグとの戦闘を例として、狼でないと物語が先に進めない場面もあり、このときに狼に変身できないと「ツマリ」の状態に陥ります。変身中の制限(○で始まる選択肢は選べない)だけで十分ではないのかとも思います。
 全ての準備が整ってから別名「魔獣城」と呼ばれる膏血城へ赴くわけですが、ここで誘拐事件が発生します。誘拐されるのは勿論…。

 ところで、下巻は501番からですが、私が最初にプレイしたときには、なぜ501番からなのかわかりませんでした。下巻も1番からあって、本の中程にある501番かと思いましたが、しかし、下巻の『ウルフヘッドの逆襲』を見てその謎が解けました…。

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2007/12/15


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