奈落の帝王(プレイ日記)


【第16回】 森の賢人

 技術点 … 10/10 ※戦闘時、剣を用いている場合のみ+1
 体力点 … 12/18
 運点 …  10/10
 時間表 … 13
 特筆点 … 《ハエ刺し》会得、色の変わる傷跡
 金貨 … 4
 食料 … 4
 所持品 … ファングセイン鋼の剣(戦闘の際6ゾロが出れば致命傷)、シージュのにおい玉、謎かけ盗賊の瓶、メマの吹き矢筒、グルシュの瓶、アラールの瓶、ザザズの瓶、バロロの丸盾(戦闘時、剣を用いている場合のみ技術点+1)、紋章のついたロケット、狐の手袋

〔372〜〕
 小屋の中は、家具一つないがらんとした空間だった。家具の類は一切なく、本も巻き物も、薬の瓶1本すら見当たらない。滑らかな壁に取り付けられた窓からは森が見晴らせた。床の中央には粗い布でできているシャツを着た老婆がうずくまっていた。老婆が両手を頭上に掲げると、その間に空中に漂うようにして揺らめく情景が現れた。眩暈を起こすような虚空の中に、惨めな姿の囚人でいっぱいの牢獄の壁が浮かんでいる。老婆はこちらの目をのぞきこんで言った。
「そなたの将来を映しているのやもしれぬ。よく見るがいい、奈落の奴隷達の姿を。奴隷達の魂はそのあるじに囚われている。そなたは手遅れにならぬうちに、彼らを救わねばならぬ。教えられるのはこれだけじゃ。もっと知りたければ、それなりの見返りをいただく。私の名前がわかるか?」
 まるで『大工と鬼六』だな。あるいは、マンパン砦に出てきたオーガーの拷問吏ナッガマンテの質問かもしれない(『王たち(諸王)の冠』19番参照)。いずれにせよ、ここでこの婆さんの名前を当てないと、この先行き詰まることだろう。頭の中に色々な名前が浮かんできた。まず真っ先に思いつくのはエンシメシスだ。何しろ、今の私の目的は魔法使いエンシメシスを探すことなのだから。この婆さんがエンシメシスだろうか……と、ここでメマの言葉を思い出す。 ――エンシメシスは北の山脈の変幻の森に住む、賢人アレセアの指示を仰ぐため、危険な旅に出なければならないことをメマに告げた―― そうか、わかったぞ。この婆さんこそが賢人アレセアなんだ。とすると、肝腎のエンシメシスはどこへ?まあ、それは後にしよう。このアレセア婆さんならエンシメシスの居所も知っているだろうから。
「あなたはアレセア婆さんでしょ!!」
婆さん、じゃと………?」途端にアレセアの目が光り、こちらをギロリと睨みつけた。
「あ、いえ、その…アレセアお姉さま!いや、もとい、賢人アレセア……」
 アレセアはしばらく黙り込んでいたが、やがて、手をたたき微笑した。いつの間にか情景が消えた。
「もうよい。見え透いたお世辞はいらぬ。それはともかく……そなたはみすぼらしいなりにしては賢い。運命の導きによりここまで来られたのじゃろうから、私も一つ手を貸そう。道はまだ遠く、敵は容易に倒せはしない。しかし、そなたならできるかもしれぬ。奈落の帝王バイソスもどうやらそなたを恐れておるようじゃからの。そなたの先を進んでいるエンシメシスの援助を受けることじゃ。」
 エンシメシス…ということは、彼もここへたどり着いたんだ。あの変幻自在の危険な森を踏破したのか。さすがは強力な魔法使いだ。ふと、私の背嚢にあるシージュのにおい玉から微かな香りが漂ってきた。アレセアも匂いに気づいたようだ。
「<批判屋>と言ったな。そなたの背嚢にある、匂いの素をみせてはくれぬか。」
 匂いの素…ああ、シージュのにおい玉のことね。はいどうぞ。
 アレセアはシージュのにおい玉をしげしげと眺めた。やがて、厳かに口を開いた。
「そなたの持っている香りのきつい薬草のかたまりには、そなたが考えている以上の働きがある。眠りを奪う性質は知っておろうが、奈落ではこの平原とは比べものにならないほどの強力な力を発揮するのじゃ。あの謎の境域で食せば、そなたは奈落の帝王の水晶の息から身を守ることができる。この世で口にしても、腹に入って――それで終わりじゃ!そんな贈り物を得たとは、そなたは幸運じゃぞ。」
 アレセアが3種類の薬草の名前を教えてくれている最中に、肩にそっと何かが乗るのを感じた。振り返ると、蛇と目が合った。私は無意識のうちに蛇をつかもうとした。しかし、蛇の方がはるかに動きが早く、私の首に巻きついた。いくら今年(2013年)が巳年だからと言っても、ここまでサービスする必要はなかろうに。まあ、私は祖国ジパングにあるリュウキュウという地方に棲息する巨大なハブを首に巻いたことがある(管理人注:実話です)から……って、そういう問題じゃないな。首を絞められるのはラメデスで慣れているし(←関係ない!)。
「私の蛇カデューサスを紹介しよう。この子は友人としては最高じゃ。忠実なのに、独立している。」
 この蛇はアレセアにとっては飼い猫みたいなものだろうか?まあ、咬みつきさえしなければいいのだが、この蛇は幾分か重くて、持病の肩こりがもっとひどくなりそうな気がする…。アレセアはそんな私を尻目に、更に話を続ける。
「この地の疫病はネズミによって広まるのではない。」
 ドラえもんだったら、この瞬間に“地球破壊爆弾”なるものを取り出して、変幻の森もろとも吹き飛ばしてしまうだろうなあ…と、またジパングの人気アニメ番組を想像してしまった。アレセアはそんな私をものともせずまた両手を頭上に掲げ、別の情景を出現させた。それは巨大な黒いスズメバチの渦巻くような大群だった。途端に私の背筋に戦慄が走る。こいつらは、あの恐怖のスズメバチどもだ。あのときはメマのお蔭で助かったが、今の私ではとても敵う相手ではない。だからこそ、今こうしてこの森に来ているのだが…。
 情景が消え、老婆がまた語り始めた。
「この寄生虫は人間の魂を針で抜き取って奈落へ送り、肉体を悪の奴隷として地上に残すのじゃ。こんな小さな敵を相手にして、戦士に何ができようか?」
 農民や子どもたちまでもが黒い軍隊に加わっていたのはこういう理由だったのか。これでは黒い軍隊を倒せないわけだ。何しろ、肉体を滅ぼしたとしても肝腎の魂は奈落にあるのだから、それを滅ぼさない限り何度でも復活するだろう。それに、罪のない農民や子どもたちと戦うことなど私には到底できない。彼らを倒してもそれは操り人形を破壊したに過ぎないし、敵の軍隊はアランシア中を巡ってますます凶悪になることだろう。アレセアはまた別の情景を映し始めた。
「奴らを負かす方法が一つだけある。ジェーラの木の汚れていない葉を燃やして、香りのよい煙を立てる。その煙があの魂盗人(ソウル・スティーラー)には致命的なのじゃ。ジェーラの若木は森にある。これじゃ…なぬ!?
 アレセアが思わず大声をあげた。一体どうしたのだ。情景は、ぼろぼろの土の山を映し出した。木のあるべきところに木はなかった……。
「何ということじゃ。ジェーラの若木はあの1本しかないというのに。次のジェーラの若木が育つのにはあと数年かかるのじゃぞ……」
 アレセアはがっかりしているが、私はトロールが若木を引きずって川岸を歩いていたのを思い出す。手短に木の説明をすると、アレセアはそれがまさにジェーラだと言った。
「すぐ行って、葉を取り戻すがよい。変幻の森の道は私が支配している――道筋をたどって行けば、川に出られる。葉を手に入れて更に行けば、そなたが馬を降りた空き地じゃ。」
 私が馬を降りたことまで知っていたのか、この婆さんは。文字通りもう何人目の目に見張られているか、数えるのが面倒になってきた。
「アレセア婆さ…いや、賢人アレセア殿。色々とお世話になりました。任務を終えたら報告に来ます。」
「それには及ばぬ。同じ来訪者を二度目以降は歓迎せぬのがこの森のしきたりじゃ。」
「ですが、賢人殿を見ていると、私の亡き祖母を思い出すのです。ね、いいでしょ?」
 私はしつこく食い下がる。
「う〜む、そういう理由があっては致し方ないのう。じゃが、それはそなたの任務が成功してからじゃ。今回のそなたの任務について私が教えることはもう何もないからの。気をつけて行くがいい。」
「ありがとう、アレセア婆さん!」
「婆さん…まあ、よい。そなたの任務の成功を祈っておるぞ。」
 次の瞬間、この小屋に入ったときと同じようにまた小屋が下がり始めた。私は小屋を出て、空き地の外へ続くただ一つの道をたどった。

〔STATUS(現在の値/原点)
 ※ 変化があったものは太い赤字
 技術点 … 10/10 ※戦闘時、剣を用いている場合のみ+1
 体力点 … 12/18
 運点 …  10/10
 時間表 … 13
 特筆点 … 《ハエ刺し》会得、色の変わる傷跡
 金貨 … 4
 食料 … 4
 所持品 … ファングセイン鋼の剣(戦闘の際6ゾロが出れば致命傷)、シージュのにおい玉、謎かけ盗賊の瓶、メマの吹き矢筒、グルシュの瓶、アラールの瓶、ザザズの瓶、バロロの丸盾(戦闘時、剣を用いている場合のみ技術点+1)、紋章のついたロケット、狐の手袋
 (Save Number:282)

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2013/10/09


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