甦る妖術使い(プレイ日記)


【最終回】 祝福の時

〔400〕
 気がつくと、寝心地の良いベッドの上に横になっていた。初めに視界に映ったのはハーフエルフのジェラだった。
「ジェラさん、どうしてここに……。」
 ジェラが私を見て微笑む。
「コバックス先生! <批判屋>さんが目を覚ましました!」
 途端に、コバックスと呼ばれた男がこちらにやって来る。
「<批判屋>殿、初めまして。わしがコバックスです。先日は弟子が大変お世話になり申した。貴殿に降りかかった呪いを解くお手伝いをさせていただきましたぞ。」
 呪い…? それは一体…。思案しているうちに、ヤズトロモとブドロンが入ってきた。
「ヤズトロモ、ブドロン…」
 そして、もっと驚くことに、苦悶の表情に満ちた人物が入ってきた。この顔は……
「…久しぶりじゃのう、批判屋。」
「琴別府!」
「誰が琴別府じゃ。ペンティじゃよ。」
 そう、この人物は不死鳥を崇拝している癒し手のペンティ・コーラだ。しかし、癒し手は病人としか接しないはず。それを察してか、ペンティが口を開いた。
「如何にも、私は病人としか接しない。<死の呪文>のみならず<ラザックの呪い>までかかって生き延びた者など、わしが<癒し手>を始めて以来、お主1人しかおらん。ヤズトロモ、あとはお前に任せても良いか。」
「ありがとう、ペンティよ。じゃが、急いで戻ることもあるまいて。もう少しゆっくりしていったらどうじゃ。」
「折角だが、断る。病める者が氷指山脈に訪れているかも知れぬからの。さらば。」
 ペンティ・コーラの意志はヤズトロモですら変えることはできないようだ。ペンティ・コーラが去ったのと入れ替わりにシャムとボーリーが入ってきた。
「<批判屋>よ。なぜわしらがここにいるかを説明しよう。まず、ブドロンがコバックス殿とジェラ殿を引き連れて、わしの塔を訪ねたのじゃ。3人ともお前を助けたいと言ってきてな。コバックス殿とジェラ殿に『寿命を元に戻す治療薬』をつくってもらい、出来次第わしらは裂け目に向かった。道中ペンティの奴が現れおってな、何事かと尋ねたら、目の見えない僧侶からお前さんが<ラザックの呪い>にかかったことを聞いたからわざわざ氷指山脈から来たというのじゃよ。」
 目の見えない僧侶…もしかすると、ハマカイ語の羊皮紙を解読してくれたあの僧侶のこと?
「わしらが裂け目に着いたころ、ちょうど地響きが起こってな。お前さんがラザックを倒したことがわかったのじゃ。じゃが、危なくてとても裂け目の階段を下りることはできなかった。そんな中、ジェラ殿が無我夢中でお前さんに声をかけ、お前さんを発見した。お前さんの手元にまだラザックの剣があったが、わしらは迂闊に触れんかった。下手にラザックの剣を捨てるとお前さんもクールの二の舞を演じることになるからな、そこでペンティとコバックス殿に協力してもらった。<ラザックの呪い>をペンティが解き放ち、コバックス殿がお前さんに治療薬を飲ませた。間一髪じゃったよ。わしらが<ラザックの剣>を無事に裂け目に捨てた瞬間、裂け目が全部土砂で埋まってしまった。それからお前さんをここに連れてきて、それからジェラ殿が1人でお前を看病してくれたのじゃよ。」
 ジェラが赤面していた。何かあったのだろうか。
「ともかく、お前はアランシアを永遠の絶望から救うという偉業を成し遂げたのじゃ。その上骸骨にもならなかったのじゃから、大したもんじゃよ。しかし危ないところだった。わしはお前さんが裂け目のところで意識をなくしたときはだめかと思ったくらいじゃ。ラザックの剣の力を消し去って、おまえさんの手からもぎ取るのは、ちと骨が折れたわ。じゃが、もうあの剣も今じゃ裂け目の土の下じゃ。さてさて、面倒は終わったわい。これからはお祝いの時間じゃよ!」
 老魔法使いは、こう言いながら滅多に見せないような笑顔を浮かべた。シャム、ボーリー、ジェラ、コバックス、ブドロンも口々に私を称賛するのだった……。

〔最終STATUS(最終的な値/原点)
 技術点 … 12/12
 体力点 … 12(7)/16
 運点 … 5/12
 メモ … カメレオナイトの血を塗った、御影石の扉から先へ進むには184と押す、ガラス球の煙を吸った、スーマ11、タマルは108歳で死んだ、ゾンビの腕にはの入れ墨、ホビットの耳大食い競争のアランシア記録は119、戦闘用ハンマーは金貨35枚、ラザックを倒したら、即座に石棺の間から出なければならない
 宝物 … 金塊(金貨10枚分)、正気の水晶、月の指輪、髑髏の指輪、金貨7枚、宝石付きの金の指輪
 手に入れた物 … ヤズトロモの治療薬(体力点+4、4口分)、鎖帷子、聖水の瓶、ナイフ、銀縁のヒビ割れた鏡、麻痺の杖、蝋燭、守護者、ラザックの剣、角の生えた魔人を象った銅の護符銅の腕輪、ハマカイ語の巻物(66)、ブロンズの鍵、ガーガンティスの角、認識票(283)

* * * * * *

 FFシリーズ最難関と言われる26巻『甦る妖術使い』を何とかクリアできました。
 この作品は原技術点が12でないとクリアはまず不可能で、原技術点が12でもクリアする確率が10%前後と聞きます。ラザックとの対決は実質「原体力点4」状態ですから、この敵と「互角に戦う」ことは叶いません。安田均氏が「一本道なので数度くりかえせば必ず解くことができるという、親切なつくりになっている」と評していましたが、恐らく当時の安田氏はこのゲームをプレイしていなかった(サイコロを使わず、読み物としてのプレイしかしなかった)ものと思われます。確かにほぼ一本道なので、何回かプレイすれば「真の道」を探すこと自体は他の作品に比べて容易です。しかし、この作品をクリアするためには「真の道」を探し当てただけでは不十分で、戦闘をはじめとするサイコロ運にも恵まれる必要があります。例えば、モリバエ(3分の1の確率でデッドエンド)や粘土のゴーレム(倒すまでの毎ターン6分の1の確率でデッドエンド)や丘トロール(3分の1の確率でデッドエンド)などの修羅場をくぐらければクリア不可能です。また、クリア必須ではありませんが、(倒すと運点3を失う)骨の守り人を倒さないとガーガンティス(技術点12)との直接対決が待っているなど、リビングストン特有の理不尽な構成満載と言えるでしょう。
 本プレイは社会思想社『甦る妖術使い』(邦訳版)を基に著述しましたが、前述の理由で「一番うまくいった」場面を寄せ集めています(実際は何回かデッドエンドになりましたが、それらをカットしています)。ストーリーの展開上、一部各能力点やアイテムの得失などが前後している場合があります。また、一部設定を変更している場面があります。尚、一人称表記は「私」に統一しました。以上の点をご理解・ご了承・ご容赦くださるようお願い申し上げます。


2019/01/02


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