モンスター誕生(プレイ日記)


【第1回】 モンスター誕生

〔STATUS(現在の値/原点)
 技術点 … 11/11
 体力点 … 19/19
 運点 …… 10/10

〔1〜〕
 身体の痛みは耐え難いほどひどかった。モンスターは力を振り絞って片目を、次いでもう一方の目を開けた。最初はぼんやりして何も見えなかったが、何度か目をしばたたかせるうちに、漸く辺りの様子が分かるようになった。薄明りの中、汚れた床と石の壁が見える。突然、痛みの感覚がまた戻ってきた。頭がぐらぐらする。モンスターはきつく目を閉じ、うめき声をあげた。痛む頭を両手で抱え込む。荒れた指先が鱗のある額に触れ、カサカサと音を立てた。
 しばらくすると、だいぶ楽になった。モンスターはもう一度目を開け、節くれだった指の間から周囲の様子をうかがった。どうやら、通路の行き止まりにいるらしい。辺りに光はないが、通路の向こう、北側から仄かな光が漏れてきている。そちらから微かな音も聞こえてきた。不規則な息遣い。何か生き物がいる!
 モンスターは巨大な身体を持ち上げ、立ち上がった。モンスターの背中には鋭い棘が一列に生えていた。ゆっくりと左右を見回し、北へ歩き始めた。筋肉が引き絞られ、重い片足が持ち上がった。どしん! 音を立てて足が地面に降りる。ついでもう一方の足。そうやって数歩進むと、あとは無意識に歩けるようになった。歩くにつれて、モンスターの動きはより速く、より滑らかになっていった。通路の北端に着くと、何者かが横たわっているのが目についた。
 その小柄な男はモンスターに背を向けて眠っていた。汚い茶色の上衣を纏った身体は赤い水たまりに浸かっており、呼吸のたびに微かに身体が上下に動いていた。モンスターの全身に、わけの分からない感情の波が駆け抜けた。怒り? 憎しみ? 恐怖? 好奇心? 飢え? それとも同情? モンスターは意味のない唸り声をあげながら、小男に屈みこんでいった。
 その音が男の眠りを破り、男はゆっくりと寝返りを打った。青白く汚れた顔が、口髭(くちひげ)や顎鬚(あごひげ)でほとんど覆い隠されている。灰色の顎鬚は胸に届くほどに伸びていた。寝返りによって、身体の下の、鋭いピカピカした金属の先がのぞき、それがモンスターの注意を惹いた。
 突如、小男が目を開けた。モンスターの身体に焦点が合うと、男の顔に恐怖が広がった。男は体の痛みを無視し、ぱっと後ずさった。男の手に握られた鋭い金属は、ぴたりのモンスターの胸に向けられていた。



 この傷ついた小男――ドワーフ――は明らかに誰かの助けを必要としている。ここは、敵意がないことを示すことにしよう。
 モンスターはゆっくりと手を差し出し、ドワーフを助け起こそうとした……が、ドワーフはモンスターが襲いかかってくるものと誤解し、鋭い金属――剣――で腕に斬りつけてきた。固い鱗のお蔭で大した傷は受けなかったが、それでも鋭い痛みが腕に走った。体力点2を失う。モンスターは頭に血が昇り、いつの間にかドワーフの首を締め上げていた。指に力が入り、鉤爪がドワーフの首にずぶずぶともぐりこんでいった。ドワーフは弱々しく抵抗したが、それにも構わずモンスターはドワーフの首を絞め続けた。やがて、ドワーフの身体から力が抜け、剣を取り落とした。その間にも体力点1を失う怪我を負った。
 何とも言えない不思議な感情が沸き起こっていた。モンスターはドワーフを助けようとしたのに、結果的にドワーフを殺してしまった。だが、後悔しても始まらない。モンスターはここから離れることにした。左右を見回し、自分一人(一匹?)だと確かめてから、西への通路に向かおうとした。少なくとも向かう意志を感じた。しかし、モンスターの肉体は、自分の意志に反してドワーフの死体に屈みこんでいった。指先の力を抜くと、飛び出していた鉤爪が引っ込んだ。モンスターはドワーフの服をぎこちなく指で探った。手が大きすぎてポケットを探ることはできなかったが、ドワーフの腰に巻いてある大きな革袋が見つかった。袋を引きちぎると、中身が辺りに散乱した。キラキラ光る金属の円盤が数枚と、小さな革が一枚だ。革は落ちた拍子にほどけ、その片面に何かの記号がぎっしり書き込まれているのが分かった。モンスターは不器用に革を拾い上げてのぞきこんでみたが、何が書いてあるのかさっぱり分からなかった。革を裏返し、両手でしごき、放り投げてみる。革を手の上に、頭の上に置いてみる。モンスターはこの革切れがすっかり気に入ったので、持って行くことにした。
 どうやら、モンスターの意志はモンスターの肉体の行動に大した影響を与えることができないようだ。また、モンスターは何者であり、自分に何ができるかもわかっていないようだ。冒険を進めるにつれて事態は変化するかもしれない。しかし、いまのところモンスターを支配しているのは気まぐれな本能の力である。
 今、モンスターは東西に延びる通路の真ん中に立っている。ここで、を行う。出た目は……だった。モンスターは通路を東の方に歩いて行った。最初の足取りはぎこちなかったが、ドワーフと会ったときのように、徐々に歩き方のコツも飲み込めてきた。やがて通路は北に曲がり、正面に大きな扉が見えてきた。ここで、を行う。出た目は……だった。モンスターは扉を開けず、今来た道を引き返すことにした。やがて、ドワーフの死体のあるところに戻って来た。そして、そのまま西に進む。

〔STATUS(現在の値/原点)
 ※ 変化があったものは赤い太字
 技術点 … 11/11
 体力点 … 16/19
 運点 …… 10/10
 所持品 … 革切れ
 (Save Number:419→308)

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2022/10/10


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