「お前のために」言っていない


 私の高校時代の先生の教えのひとつに、「『お前のために言っている』は、教師として最低最悪の言葉である」というものがあるが、これはまさにそのとおりだと思う。自分の思惑通りに事が運ばない、つまり自分の思い通りに生徒が行動しないとき、無責任な教師がよく口にする言葉である。ガミガミと説教をした挙句「お前のために言っているんだぞ」と偉そうに言う。
 これは、何も学校の教師に限ったことではない。学習塾の講師しかり、習い事の先生しかり、ともかく「先生」と呼ばれる職種全般に当てはまることである。特に、私塾の経営者に多いようである。いずれにせよ、このような輩にロクなのはいない。
 私に言わせれば「お前のために言っている」という言葉を発した時点で「お前のために言っていない」のである。「お前のために言っている」という言葉の背景には、生徒が自分の思うように行動しないことによって教師の被る不利益があるのだ。しかし、それを直接生徒に言うわけにはいかないので、「生徒のために」という名目で言うことを聞かせようとする。つまり「お前のために言っている」という言葉には、「お前が言うとおりに行動しないから俺に迷惑がかかるんだ」という意味が込められているのである。
 第一「お前のために」という言葉自体が恩着せがましい。私に言わせれば、このような言葉自体が教師の責任逃れそのものを意味しているのだ。本当に生徒のためを思っているのならば、どのように言えば生徒が受け入れやすくなるか考えるだろうし、本当に生徒のためを思っているのならば「お前のために」とは絶対に言わないはずである。場合によっては、生徒に無理強いさせない手段も講じるであろう。今、自分が何をしなくてはならないかをわからないほど生徒は馬鹿ではない。
 「お前のために言っている」教師たちに言いたい。本当に「お前のために言っている」のなら、少しは言い方を工夫したらどうか。

2008/12/31


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