失われた魂の城


 ここはリントン。商業の街としては比較的平和な街だった。
 その中で、二人の人物がため息をついていた。
 一人は、ジャスパー・フェイズ。そして、もう一人は…主人公である。
 ジャスパーは、このリントンの街に真の戦士はいないものかと悩んでおり、主人公は誰か自分を雇ってくれる者はいないかと悩んでいたのだった。そんな二人が鉢合わせをしたのはほんの偶然だった。二人の利害関係は一致したのだった。
 主人公は、ジャスパーのテストを優秀な成績で通過し、ジャスパーの依頼を聞くことになった。
 ジャスパーの父ルーサー・フェイズは、“失われた魂の城”の城主であるスランクという悪魔と取引をした。自分の魂と引き換えに、ジャスパーや彼の弟妹たちに莫大な富を残すという取引を。スランクは確かに約定を履行した。しかし、ルーサー・フェイズの魂はいまだに“失われた魂の城”に幽閉されているのだという。もし、スランクを倒し、父ルーサー・フェイズの魂を解放してくれたら、その報酬に糸目はつけないという。
 主人公は、これを二つ返事で承諾した。これまでの冒険とはまるで異質の、この世のものではない場所へ赴くことになった。主人公は、まずルーサー・フェイズが交霊術でジャスパーと話していた6つの品物を手に入れる必要がある。そのうちの一つ、エルヴィラ・フェイズの“乙女の涙”は既にジャスパーの手によって用意されていた。“乙女の涙”以外の5つの品物を手に入れるために、主人公は翌日からリントンの街を徘徊することとなった。
 それは、この世で最も奇妙な冒険の幕開けでもあった…。

 『失われた魂の城』は、GDFシリーズ第四作目(原版では最終巻)です。著者はデーヴ・モーリス&イヴ・ニューナム両氏、訳者はマジカル・ゲーマー氏です。GDFシリーズは、モーリス&ジョンソン両氏が中心ですが、この作品に限り、イヴ・ニューナム氏も執筆しています。3巻『炎の神殿』の2ページ目に“イヴに捧ぐ”とある辺り、この作品を出版した直後にモーリスとイヴが結婚したものと思われます(違っていたらゴメンナサイ…)。
 この作品は、場面で3部に分かれています。第一部は、リントンの街、第二部はリントン出発〜失われた魂の城の入り口まで、第三部は城内です。
 この作品は、リントンでの無益な争いは出来る限り避けられるようになっています。逆に、無益な争いをしてしまうと、後後で大変なことになります。「目的のためには手段を選ばぬ」ではいけないということです(しかし、286番は正当防衛ではないかと思いますが)。
 この冒険の“黒幕”であるスランクですが、GDFシリーズの最終ボスの中でもかなりの強敵に入ります。『ドラゴンの目』に出てきたあのナックラヴィーよりも強敵です。しかも“失われた魂の城”の途中途中にも主人公の進路を阻もうと色々変装して登場します。このスランクの見分け方ですが、簡単です。右目が悪い人物は全てスランク(あるいは変装したスランク)です。カバーの表紙にも、隻眼の悪魔が描かれていますが、彼がスランクです。
 6つの品物を適材適所全て使いこなせば、サイコロを一回も振る必要なくスランクを無傷で倒せるようになっています。途中の選択は慎重に行う必要があるでしょう。216番のランプの精の「知識」は、恐らく塩を手に入れろという意味ではないかと思います。(白黒反転⇒)白熊の敷物を持って氷の床の部屋に行き、塩で氷を溶かしてスランクの面を取り出し、四つ葉のクローバーをスランクの面の上に置き、スランクに乙女の涙を振り掛けて目をつぶし、尼僧の髪の毛の弓と鎧の破片の矢でスランクを射止め、そして聖者の灰をスランクの体にふりかけてスランクを永遠に葬り去るわけです。
 では、水晶玉は…最初に使ったはずです。この失われた魂の城を見つける際に使いました。だから、76でなくしたアイテムに入っていなかったわけです。この水晶玉だけは使わないとクリア不可能になります。
 その他、数々の情報&謎解きがありますが、例によって研究室の方にて…。

 この作品で、ひとつ翻訳に関する基本的なツッコミを入れておきましょう。ルーサー・フェイズは、たとえスランクから解放されても成『仏』はできません。この物語は英国の作品のはずです。とすると、少なくとも仏教ではないと思います。つまり、成仏は仏教信者でなくては不可能で、仏教でないフェイズ家の一族が成仏など出来るはずもないわけです(くだらないツッコミですが、しかし下手をすると宗教裁判にもなりかねない大問題かも…)。

2006/08/02


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