惑星不時着


 生まれ故郷の地球に関する情報を入手しようと惑星アンフォルムに到着した主人公アール・デュマレストは、偶然にもアンフォルムの有力者クラウゼ氏の一人娘であるシャラナの誘拐事件に巻き込まれた。どうにかシャラナの救出に成功し、クラウゼ氏はお礼として地球に関する情報探しに協力してくれることとなった。その結果、ハスラー星に行けばよいことがわかった。
 一方、クラウゼ氏は悪の組織から目を付けられることとなり、今シャラナがアンフォルムに居続けるのは危険であるという判断が下された。そこで、主人公の次なる目的地及びシャラナの親戚のいるハスラー星へ二人で旅立つことになった。
 シャラナには、ある程度未来を予知する超能力がある。そのシャラナが、ハスラー星へ向かう途中に見た夢とは、人が化け物に襲われて死ぬというなんとも不吉な夢だった。そしてその化け物が現に宇宙船に潜んでいるらしい。
 ハスラー星に向かう前に、まずはこの化け物を倒さなくてはならない…。

 『惑星不時着』は、前作『巨大コンピュータの謎』の続編です。
 シャラナと共に惑星アンフォルムからハスラー星へ行くまでが前作『巨大コンピュータの謎』でした。この作品も『巨大コンピュータの謎』と同じく、いくつかの場面に分かれています。
 前半は、ハスラー星へ向かう途中の宇宙船で化け物を倒します。一緒に乗り込んだ高貴な乗組員の中から信頼できそうな人物を選んでペアを組みます(と言っても、シャラナは主人公にずっとつきまとう形になりますから3人で行動することになるのですが)。
 しかし、化け物からは逃れることができても、この宇宙船はもはや破滅の運命からは逃れられないことを悟った主人公はシャラナと共に脱出艇で宇宙船から離れます。そして、いずこも知れぬ惑星不時着するのです。
 不時着した先は、未開のジャングル、ラナス島でした。ここは閉鎖的な島で、なんぴとたりとも許可なくこの島に入ってはいけないし、島民も島を離れることは出来ません。ラナス島の長老は主人公に一つの任務を託します。ラナス島に代々伝わる秘宝――水晶の女人像が何者かによって盗まれたので、隣の島のマナールまで行って取り戻して来て欲しいとのことでした。それまではシャラナはラナス島の人質として囚われの身となります。主人公に選択の余地はないということで、話が展開していくわけです。
 ところで、マナール島の太守は、第1巻に出てくるキグニー同様、個人的には暗殺したい輩ですね。

 この「デュマレスト・サーガ」シリーズですが、私個人としてはどうも肌に合いません。というのも、原作を読んでいようがいまいが、ストーリーの流れが非常につかみづらい構造になっているからです。それが“非常にわかりづらいマルチ・エンディング”としても現れています。266番です。デュマレスト・サーガ第3巻(ほぼ”無期未刊”状態ですが)へのつながりを考慮しても、266番の処理がうまく行っているとはお世辞にも言えないのです。
 前作同様、内容も結構理不尽な展開が多く、原作の流れに合わないとすぐデッドエンドにしてしまう構造(106番、180番など)もいただけません。
 また、第1巻をプレイした人へのボーナスが能力値の上昇のみというのも辛いです。これは「ユニコーン・ゲームブックシリーズ」にも当てはまることですが、第1巻で得た所持金が全く使えずに気落ちする人も、もしかしたらいるかもしれません。
 TTG――後のグループSNE代表である安田均氏も、ゲームブック作家としてはまだまだの域なのでしょう。

 さて『惑星不時着』のクリア後ですが、原作すら完結していないという状況では、ゲームブック版が完結するはずもありません。
 原作について、山口プリンさんからコメントをいただきましたので引用させていただきます(ご本人からは了承を得ていることを明記しておきます)。
 ときどき覗かせてもらっています。これからも多くの作品の解説を期待しています。
 で、ちょっとだけ気になったのですが「デュマレスト・サーガ」について、原作の方は無論完結と書かれていますが、実は原作も最終巻(31巻)で地球の座標を発見したところで終わっているだけで未完なのです。デュマレストはまだ地球に辿りつけていないし、サイクランとの対決も完結していません。
 海外では幻ともいえる32巻が発売されたそうですが、それも「地球まで近づいたものの、サイクランにデュマレストの乗った宇宙船を攻撃され、地球に不時着を試みる」という、なんともなんともいい所で終わっているそうです。
 ちなみに「巨大コンピュータの謎」の後書きでは原作の1・2巻の間にあたるエピソードと書かれていますが、ずっと後の巻で判明する地球の情報があっさり“ライブラリ”で判明しているあたり、ゲームブック版はパラレルワールド的な存在と思った方がいいみたいですね。
 「惑星不時着」発売まで相当の時間がかかったことを考えると、仮にゲームブックブームが今も続いていたとしても、未だにゲームブック版は完結していないような気もします。個人的にはローンウルフシリーズのように何巻もつづいて欲しかったのですが。
(11月19日(土)21時19分27秒)
 もしかすると、この作品の進行状態そのものが不時着なのかもしれませんね(笑)。

2005/12/20


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