巨大コンピュータの謎


 主人公アール・デュマレストは、宇宙を旅する流れ者だ。主人公は惑星アンフォルムに向かう宇宙船シーカー号に、エンジニアとして乗り込んでいた。アンフォルムの首都インフォスにある巨大コンピュータには、銀河のありとあらゆる情報が入っているとの噂だ。もしそれが本当ならば、主人公の生まれ故郷――地球――に帰れる情報を入手できるかも知れない。主人公の人生最大の目的は、子供の頃後にした地球に帰ることなのだ。
 シーカー号がアンフォルムに到着するまでの間、主人公はアンフォルムについて色々なことを調べ上げた。
 それによると、アンフォルムは治安は「良い」らしいが、差別的な惑星でもあるようだ。一級、二級と市民階級が分けられており、一級市民に非ずんば人に非ずとされているらしい。「治安が良い」のは市内だけで、そこに入れるのは一級市民だけという不平等極まりない惑星という情報もある。
 主人公は、一抹の不安と一縷の期待を胸に、アンフォルムに降り立った…。

 『巨大コンピュータの謎』はE・C・タブ原作の「デュマレスト・サーガ」を安田均&TTGのメンバーがゲームブック化した作品です。
 安田均氏と言えば『ゲームブックの楽しみ方』の著者でもありますし、カードゲームやボードゲームといった非電源系ゲーム界では権威とも呼ばれています。FFシリーズでは『地獄の館』や『モンスター誕生』なども翻訳していますが、日本のゲームブック作家としてはあまり評価は高くないようです。まあ、全部得意という人はいませんから、向き不向きはあると思います(←えらそうに)。
 この「デュマレスト・ゲームブックシリーズ」は、以下第2巻『惑星不時着』と続きます。しかし、各巻独立してプレイできるようになっていますので、第2巻から始めても一向に構わないとは思いますが、やはりこれを読んでいる以上は第1巻から始めるのが良いと思います。
 能力値には体力敏捷力知覚力運勢値の4つがあります。
 なんと、このシリーズの戦闘では、負傷した体力は戦闘終了と同時に自動的に回復するという驚異的な回復力です。
 前半は、取り敢えずアンフォルムの中枢であるライブラリに向かい、情報を入手しようとします。しかし、予想通り情報量は法外なものでした。そこで、主人公はお金を調達する算段を講じることになります。この辺りは『双方向型』システムです。
 しかし、中盤でシャラナ・クラウゼという少女の誘拐事件に関わることになり、そこから物語は急展開します。世間知らずの娘が無法地帯の市外を歩いていて誘拐されるのは自業自得と言うべきことでしょうが、このシャラナのお陰で地球に関する情報が手に入ることになります。
 シャラナを救出して(或いは誘拐されて)からは、後半の旧ライブラリ内に潜入するところまで自動的に話が進みますので、それほどマッピングなどに煩わせられることもなくプレイを進めることが出来ると思います。
 それが、この作品の長所でもあり短所でもあるわけです。
 ライブラリに関するレベル5の情報を自力で入手したら、もうこれ以上アンフォルムに拘(こだわ)ることなくハスラー星へ行く準備をすればいいものを、なぜそのようなパラグラフ構造にしないのでしょうか。無理矢理にでもシャラナに会わせようとするつくりは些か強引な気もします。
 第2巻の『惑星不時着』は、無論シャラナと一緒ですが、そこでもまたもやシャラナは誘拐されてしまいます。ひょっとすると、シャラナは誘拐されるために生まれてきたのではないかと思うくらい誘拐されます。

 …ここ10年来の私は、デュマレストと同じ心境かもしれませんね。理由あって、かつての生まれ故郷を離れることになったという点では。しかし、離れるときの私の心境としては「離れたかった」気持ちもあったのです。私を煩わせる諸悪の根源を断つために。
 この作品は私自身の課題でもあるのです。

2005/11/13


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