奈落の帝王(プレイ日記)


【最終回】 意外な結末

〔400〕
 バイソスから相続した宮殿を探索していて、水晶の壁に据え付けられた水晶占いに使う鏡を見つけた。召使いがすり足で進み出て使い方を教えてくれる。私はカラメールへ向きを合わせ、カラメールに平和が戻ったかどうかを確かめる。
 思った通り、畑にはまた村人達の姿が戻っており、カラメールの平和な生活を楽しんでいるようだった。カラメールの処刑場には、ルーサーの首が獄門台に晒されており、その穢れた首には罪状の記された札が吊り下げられていた。看守はクワグラントの穴蔵で獄死、ルーサーの手下及び裏切者の召使いは入牢(じゅろう)に処せられていた。水晶の平原に囚われていた裏切者は永遠に幽閉されることになった。カラメールに真の平和が訪れた何よりの証拠だった。
 カラメールの新しい男爵はあの神経質そうなマッドヘリオスだった。彼ならば大丈夫だろう。多少神経質ではあるが正直者であろうし、男爵の威厳はこれから徐々につけていくことだろう。
「その鏡を通して、地上の者と話をすることもできます。尤も、相手からもこちらの姿は見えてしまいますが…。」
 召使いが教えてくれた通り、私はマッドヘリオスとの会話を試みた。
「うわっ!…だ、誰かね……あ、<批判屋>君ではないか。君からの書状は受け取ったぞ。いやあ、今回のことでは本当にお世話になった。ありがとう。カラメールの全市民を代表してお礼を申し上げる次第だ。キャロリーナもあの世から君の働きには感謝している…はず……うっうっ…」
 神経質な上に泣き上戸な彼の目には、従姉妹の死を悼む涙であふれかえっていた。
「<批判屋>君、もしも君が地上に戻ってくるようなことがあったら、カラメールにも立ち寄ってはくれぬか。体の大きさの問題はあると思うが、できる限りのことはさせてもらうつもりだ。」
「ありがとうございます、マッドヘリオス殿。それでは。これで…」
 マッドヘリオスとの会話を終えた頃、何千もの翼の音が聞こえてきた。宮殿の外へ出てみると、空中を旋回するエクトヴァルトでいっぱいだった。ひょっとして、バイソスの最後の計略か?しかし、そんな束の間の恐怖もただの杞憂に過ぎなかった。彼らは単に新しい支配者に挨拶をしに来ただけだったのだ。エクトヴァルトのうちの1人(1匹?)が私に敬礼をすると、他の者がそれに倣う。そして彼らは再び水晶の平原に飛び立った。
 鏡の前に戻り、再び地上の様子を見る。
 メマは両親とともに、無事に自分の村に戻っていた。緑色のねばねばも既に洗い流しており、暗い雰囲気が一掃された。メマはこんなにかわいい女の子だったのか…。
「あ、<批判屋>さん。あなたのお蔭で私はまたこの村に戻ることができたの。本当にありがとう。」
 メマの清々しい笑顔の前にエンシメシスのことを話すのを一瞬ためらったが、気を取り直してメマに伝えた。エンシメシスの家をメマに譲ること、そして“例の本”を開くことを。メマはエンシメシスの死を聞くや、一瞬にして曇った表情に変わった。
「エンシメシス先生……やっぱり、危険な旅というのは本当だったのね……」
 メマの目からは止めどもなく涙があふれ出ていたが、メマは気丈にも私に言った。
「<批判屋>さん、エンシメシス先生の遺言まで届けてくれて、本当にありがとう。私、エンシメシス先生の遺志を継いで、立派な魔法使いになって見せます。だから、<批判屋>さんも奈落から私を見守っていてください。」
 涙を流してはいたが、その目には強い決意が感じられた。私はメマとの会話を終えた。
 バロロにも旅の結末を報告しなくては…。
「おう、ALADDINじゃないか。どうした。」
 バロロに事の顛末を話すと、バロロは一瞬驚いた表情を見せたが、すぐにいつもの反応を示した。
「奈落の帝王か…。そう言えば、奈落から戻ってきた男の話を聞いたぞ。邪悪な前の帝王を倒して、新しく帝王の地位に就いた英雄がいたと言っていたが、まさかお前だったとはな。」
「バロロさん。今度私が地上に戻った際には、必ずファングセイン鋼の剣と丸盾を届けに参ります。今の私が持っているよりは、元の持ち主に返した方が良いと思いますので……」
「そういうところは奈落の帝王になってもちっとも変わらんなあ。まあ、私はお前のそういうところが好きだ。おう、いつでも待っているぞ。」
 こうして、私はかつて師匠と呼んでいたバロロとの会話を終えた。
 さて、最後はアレセア婆さんだが、その必要はなかった。足に何かがまとわりついていた。それは、蛇のカデューサスだった。
「ひどいじゃないですか、<批判屋>殿。巳年(2013年)中にエンディングを迎えると思ったのに。今年(2014年)はもう午年ですよ。おまけに私の首を(第19回参照)……。人間に絞め殺される大蛇なんて、洒落にもなりませんよ。ちなみに、日本漢字能力検定協会が主宰している巳年の『今年の漢字』は戦(2001年)と輪(2013年)でしたからね。」
「いやあ、ごめんごめん。色々なネタを取り入れて文章を推敲していたら、遅くなっちゃった。」
「まあいいでしょう。ともかく…あなたと過ごす時間はたっぷりある。楽しくやりましょう。アレセアも、<批判屋>殿の任務の成功を喜んでいましたよ。私が生きているうちに地上に戻れたらまた立ち寄って欲しいとのことでした。」
 生きているうちに……確かにそれはその通りだ。私の祖母も長生きはした方(享年92歳)だが、私が高校を卒業するまで生きることはできなかった。そんなことを思いながらも、私は新しい相棒との時間を楽しんだ。

 カデューサスの偉大な知恵に導かれて、私はさまざまな驚異を発見する。やがて奈落と地上とを行き来する方法を解明し、宇宙に及ぶ、神々自身をも巻き込んだ冒険に旅立つ。だが、それはまた別の話、神話と伝説の書物にて…………。

〔最終STATUS(最終的な値/原点)
 技術点 … 10/10 ※戦闘時、剣を用いている場合のみ+1
 体力点 … 12/18
 運点 …  9/10
 時間表 … 13
 特筆点 … 《ハエ刺し》会得、色の変わる傷跡、シージュのにおい玉の薬草を食べた
 金貨 … 4
 食料 … 1
 所持品 … ファングセイン鋼の剣(戦闘の際6ゾロが出れば致命傷)、シージュのにおい玉、謎かけ盗賊の瓶メマの吹き矢筒、グルシュの瓶、アラールの瓶、ザザズの瓶、バロロの丸盾(戦闘時、剣を用いている場合のみ技術点+1)、紋章のついたロケット、狐の手袋、ジェーラの葉、銀の呼び子、宝石を鏤めた胸当て、光沢のあるブーツ、金の拳、真珠を嵌め込んだ頭蓋骨、縞瑪瑙(しまめのう)の笏、水晶球

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 当サイト初のゲームブックプレイ日記『奈落の帝王』をここまで読んでくださいまして、誠にありがとうございました。
 初めてのプレイ日記で色々と不慣れなこともありましたが、なんとか完成しました。単なる自己満足で終わっている感は否めませんが、どうにか終わることができました。これも、プレイ日記を読んでくださった方のお蔭です。
 思い起こせば、『火吹山の魔法使い』や『ソーサリー』のプレイ日記をされている方々のサイトを見て、私もプレイ日記を書いてみようと思ったのがきっかけでした。そして、どうせ書くならみんなが書いていないものを書いてみようということで『奈落の帝王』をプレイしてみようと思いました。言ってみれば、ほんの気まぐれ(出来心?)です。
 基本的には社会思想社のFF32巻『奈落の帝王』の文章表現を用いていますが、主人公<批判屋>の一人称表記は“私”に統一しました。また、アイテムの得失や物語の進行を一部前後させたり、加筆修正したりした箇所もあります。ご了承ください。


2014/01/30


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