凶兆の九星座


 このゲームブックは、RPGamerVol.7(国際通信社)の付録のゲームブックです。著者はセプテム・セルペンテース氏、そして訳者は「マーリンの呼び声」の管理人であるセプタングエース(日向禅)氏です。
 このゲームブックは従来のファイティング・ファンタジーシリーズの設定とは一線を画します。最初の設定に「宿命値」という値が設けられ、その宿命値によって主人公の実力と弱点が違ってくるからです。
 従来のシリーズですと、最初の原点数を決める際にはサイコロの目が大きければ大きいほど得をします。サイコロの目が大きければそれだけ強いキャラクターができるからです。1296回に1回の割合で技術点12・体力点24・運点12という最強キャラができますが、同時に1296回に1回の割合で技術点7・体力点14・運点7という最弱キャラもできるわけです。
 しかし「凶兆の九星座」は、最初の1点〜6点の宿命値を自分で決めることができます(もちろん従来通りサイコロを振って決めても構いません)。この宿命値が大きければ剣の腕前は強くなりますが、体力、そして<魔芸>と呼ばれる技術はその分なくなります。逆に宿命値が小さいと、剣での戦闘は不利になりますが、その分体力<魔芸>を使えるようになります。
 さて、内容ですが、描写の時点で既にこれまでのファイティング・ファンタジーとは違っています。何しろ、本文中には「君は〜」という二人称の表現は一切出てきません。本文中での主人公の表現は、一人称(己・自分)もしくは三人称(道化)となっています。
 それから、この冒険の目的も「自分以外の誰か(あるいは世界)のための任務」ではなく、飽くまでも自分が生き延びることが目的となっています。一応、最初は「<紫の瞳>メーヴのための任務」となっていますが、物語が進むにつれて最終的に自分が生き残ることが目的であることが明らかになってくるでしょう。
 対象年齢は、高校生以上と言ったところでしょうか。これは、何も表紙から判断したのではなく、クリアするのにいろいろな謎を解かなくてはならないのが一苦労なのです。冒頭の『遊び方のこつ』にある「手がかりは文章中にあるかもしれない」というのが曲者で、これは今こうしてクリアして振り返ってみて本当にそうだったなあと実感しました(それにしても、なんともかわいらしい髑髏だこと(笑)…)。中学生以下で「凶兆の九星座」を何のヒントもなくクリアした人がいたら、私は「すごいな〜」と感心してしまいます。もうひとつだけ言うならば、このゲームブック、ドラえもんには絶対にクリアできないなあということです(笑)。

 ただ、このゲームブックについての私の「批判」を申し上げますと、食糧―つまり、体力点を回復する機会が極端に少ないのがきついです。<魔芸>のルールにはある程度「バルサスの要塞」との共通点があり、<道化の笑い>は「バルサスの要塞」で言うところの<体力増強>に当たります。しかし、これも回復値から見ると<体力増強>の方が優っています(<体力増強>で回復できる体力点原体力点の半分なので7点〜12点、それに対し<道化の笑い>は一律7点です)。しかも<道化の笑い>は1回しか使えません。これだと宿命値が高い主人公は体力点がゼロでの死亡が極端に多くなってしまうと思います。
 まあ、「真の道」を通ってさえ65%くらいの成功率(訳者談)らしいので、このゲームブック自体が難しいと思います。間違っても、入門用にはお薦めできません(笑)。とはいえ、読み物としてもゲームとしても完成度は高く、非常に読み応えのある作品と言えることも確かでしょう。

 で、なぜ私がここまで分析したかと申しますと…実は、私が「凶兆の九星座」のフローチャート並びに謎解き(本文中に出てくるクイズの解答)を作成した張本人だからです!
 私の作成しましたフローチャート及び謎解きは、国際通信社のホームページからダウンロードできます。
 ダウンロードや、ファイル内容の改良などは、個人の範囲内ならば無論自由に行なって構いませんが、これを商用で使用することは厳に慎んでくださいませ。私だけでなく、国際通信社や著者・訳者からも損害賠償を求められることは必定ですので…。
 また、このフローチャートや謎解きに関するご意見・ご感想あるいはご批判などもお待ち申し上げております。掲示板にでもお書きいただければ幸いです。
 (凶兆の九星座のプレイ感想文は次の更新記事にて述べることにします。)

2005/05/12

※ 2005/09/30 ※
 国際通信社のダウンロードページへのリンクを修正しました。


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