天空要塞アーロック
主人公の名は《宇宙貴族》ジャン・ミストラル。四本腕の人間型戦士の特別捜査官である。
主人公の住む星エンスリナは今重大な危機に瀕している。かつてエンスリナを統治するヴァークス王の重臣だったル・バスティンが、人工要塞惑星アーロックを拠点にエンスリナを襲撃するらしい。ル・バスティンが造りだした
完璧
な生命体は、自分達を《プリフェタクス》と呼んでいるという。
この任務に失敗すれば、エンスリナの何十億という命が奪われることになる。しかし、成功すれば主人公の名声が一躍上がることも確かだろう。
主人公は、自分の宇宙船《星霧号》に乗り、アーロックへ単身で向かう。
FFシリーズ33巻『天空要塞アーロック』は、日本で翻訳されたFFシリーズ最後の作品です。著者はマーティン・アレンです。
しかし、FFシリーズはこれで終わりではなく、本場イギリスでは60巻まで刊行されています。
日本語版(社会思想社)の奥付によると、この『天空要塞アーロック』の初版が1991年5月30日ですから、既にこの頃からゲームブックというジャンルが下火になりつつあったということかも知れませんね。あるいは、この作品がゲームブックを下火にさせた原因という見方もなくはありません。
この作品のジャンルはSFということになるでしょうが、既刊の5冊(『さまよえる宇宙船』『宇宙の暗殺者』『宇宙の連邦捜査官』『電脳破壊作戦』『スターストライダー』)と比べると、物語としてもゲームとしても完成度が桁違いに
低い
のではないでしょうか。
冒険を進めていくとわかるのですが、途中の物語の展開が極端に強引過ぎるのです。
例えば、395番を見ても分かる通り至極腹立たしい老人マルサツに
絶対
同行しないといけないような展開となっています。そして、次は「薬を
絶対
飲む」ような選択肢しか用意されておらず、これは稚拙極まりない処理です。
ある程度の誘導は必要ですが、これはあまりに理不尽過ぎて、しまいには腹が立ってくるゲームでもあるのです。
アーロックに到着するまでが無駄に長ったらしく、オレンジ色の球体との戦いや《グランド・アーチペラーゴ号》との戦いも非常に分かりづらいものとなっています。項目を読み進むだけでウンザリしてしまっても不思議ではありません。
カバー見返しにある図をゲーム中に使用するというものですが、これも成功しているとはお世辞にも言えません。第一図(200番で使用)は上段から下段に渡るゲームですが、253番の暗号でここを渡るヒントを得てもほとんど役に立ちません。進んだ先の項目番号が前の項目番号とつながっていなかった場合はデッドエンドという発想はなかなかのものでしたが、これでは台無しです。また、第二図(48番で使用)はマルサツのせいでジンのゲームに参加させられるわけですが、これも選択肢をデタラメに選んでも消滅する(361)可能性は極めて低いものです。これでは意味がありません。
そして、何よりも
任務の背景
自体でこのゲームをする意欲が殺がれます。
エンスリナをこれだけの危機に陥れた
元凶
はル・バスティンではなく
ヴァークス
です。「任務の背景」を読む限りでは、ル・バスティンが惑星エンスリナを征服する計画を企てた
元の
原因を引き起こしたのはヴァークスだからです。こういう点も設定として無理があると思います。
これは、経済学全般に言えることですが、経済がうまく行っていないのは統治者や国税を扱っている者の責任です。私も経済学者ではないので、あまり込み入ったことは言えませんが、お金の使い方1つで、国を豊かにも国民延いては地球そのものを苦しめたりもします。一時期もてはやされていた資本主義経済ももう通用しなくなってきています。普段は無駄に税金を使っているくせに上げる必要のない税率を上げたりすると、いつか日本にもル・バスティンみたいな輩が出てくるかも知れません。いや、一部の地域では出てきているのではないでしょうか。
400番にある「
かくして、君の任務は成功裡に完了した。
」という表現を見ても、今ひとつ実感しません。それまでの展開が非常に腹立たしくて、とても任務完了の雰囲気は味わえません。アーロックの初代統治者よりも、無能なヴァークスの王位を剥奪したい気持ちでいっぱいです。
…ところで、くそったれのマルサツを見て、ギリシャ神話アドベンチャーゲーム�掘慄糎閏圓竜�還』に出てくる卑劣な商人マルコスを思い出したのは私だけでしょうか。マルサツもマルコスも
私の中学時代の嫌な輩
に似ているんですよねえ。30巻『悪霊の洞窟』にも出てきたのですが、それとはまた別のタイプです(私も好き嫌いが結構激しいのは自分でも分かっていますが、こいつらこそ“不倶戴天”ですから…)。
2005/07/10
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