真夜中の盗賊


 ポートブラックサンドの盗賊組合である盗賊ギルドの集会室の真ん中に主人公は立っていた。
 主人公は、盗賊ギルドの見習い盗賊である。そして、今まさに正式な盗賊メンバーになるための最終試験に挑むところだった。
 ギルドの長ラニックが主人公に、試験の内容を説明する。
 一週間ほど前、ブラスという商人が“バジリスクの瞳”という名で知られる宝石を手に入れた。そして、ブラスは“バジリスクの瞳”をどこか別の場所に隠した。主人公に課せられた試験とは、その“バジリスクの瞳”を翌朝までに探し出して盗んでくることである。
 これまで盗賊ギルドで修業した成果が試されるときが来た。主人公は、最後の試験に挑む!

 FFシリーズ29巻『真夜中の盗賊』の舞台は、5巻『盗賊都市』以来24巻ぶりのポートブラックサンドです。著者は、グレーム・デーヴィスです。
 5巻『盗賊都市』では、ニコデマスに会うために主人公はポートブラックサンドに赴きました。そこでは、ポートブラックサンドの来訪者からの視点でポートブラックサンドの無法ぶりがよく描写されていました。今回の『真夜中の盗賊』では、ポートブラックサンドの町民(盗賊)からの視点でポートブラックサンドが描写されています。しかし、194番に「ここ、ポートブラックサンドでは、捕まった盗賊の処刑はすぐに行なわれるのだから……。」とあるところを見ると、ポートブラックサンドでも「一応」盗みはまずいようです。尤も、アズールに比べればいかなる盗賊の悪行もかわいいものですが。歌う橋にいるニコデマスも健在です。彼は、記憶力こそ少し弱いものの魔力はヤズトロモに負けず劣らずの腕前です。怒らせたりしないように…。
 さて、この冒険についてですが、内容は「盗賊入門」と言っても良いくらい(笑)、盗賊に関する一通りの技術が網羅されています。特殊技能として、最初に“壁登り”、“姿隠し”、“錠破り”、“すり”、“目利き”、“忍び足”、“感知”の7つのうちから3つを選択します。そして、自分の特殊技能があるかないかでそのときの場面が違うのですが、これは特殊技能を持っていない場合の場面が厳しすぎる面もあると思います。特に“すり”“目利き”“感知”の3つは、他の品物で補うことができないため、「これらの特殊技能を持っていない=行動失敗」という図式が生まれてしまいます。せめて、もう少し技術点の判定や運だめしなどで補うようにすればなお良かったのですが。
 しかし、そういった点もさることながら、ストーリーとしては単純明快で、しかも前半(“バジリスクの瞳”の在り処の入口を探すまで)と後半(“バジリスクの瞳”の在り処の入口に入った後)がスッパリと別れているところが良いでしょう。後半は完全に一本道で、途中で出てくる迷宮も運だめしなどをうまく利用して番号が無駄に増えないようにしています。ここからが本当の勝負です。
 一本道ですから項目番号を400ギリギリまで詰め込んだかと思われますが、本当のところ『真夜中の盗賊』は実質上397項目数なのです。あとの3項目は“オマケ”の項目番号です。その3項目を挙げてみます。見つけられていない方のために隠しておきます。見たい場合は白黒反転でどうぞ。

158 商人ギルドにいるガーゴイルと戦っているときに、「魔法の武器を持っている」と嘘をつくとこの番号に飛ぶ。この手の番号は、双葉社のゲームブック「ドラゴンクエスト�蕎經�」や「学園妖怪バスターズ�供廚砲盻个討�る。自分自身を欺いている読者への「著者罰」であろう。
260(275) 偶然260番を見つけた読者が試しに進んでみると275番にたどり着き「インチキはいけないよ!」と叱られる。だが、見開きで見える他の番号(257〜259)はいずれも前半(ポートブラックサンド)の場面なのであまり意味がないかもしれない。

 こういった、インチキ出来ない“お遊び”のパラグラフ構造も面白いものです(笑)。しかし、本当のところ、グレーム・デーヴィスはこういった“お遊び”を最初から考えていたのでしょうか。それとも、――私の推測通り――項目番号が余ったからでしょうか。本人のみぞ知る(笑)…。

 訳者あとがきで、「盗賊クンは非常に損な役回り」という言葉がありました。確かにそうだと思います。以前私が高レベル(レベル100以上)の盗賊1人でPCエンジン版ウィザードリィ��(HOM)をプレイしたとき、レベル100以上の盗賊は戦闘中一撃で殺されました(沈)。「隠れる」コマンドに成功したにも関わらず殺されました。また、双葉社のゲームブック「ウィザードリィ外伝�機廚任癲�盗賊が「戦闘であまり活躍できないからっていつも俺を捨石にしやがって!」と怒鳴っていました。確かに、コンピューターゲームとかでは盗賊は戦闘もあまり得意ではないし、魔法も使えません。せいぜい鍵開け、宝箱などの罠さがしだけで、これすら忍者やバード、レインジャーに代用される虞もあります。
 この冒険をすれば、タイタン世界や他のファンタジー世界における“盗賊”というキャラクターの見方が変わると思います。

 それにしても、作り物の任務でよくこれだけの凝った構造が出来るものですね。サカムビット公の手下にも匹敵するほどの「盗賊ギルド最終試験対策委員会」(仮称)がよく機能しているのか、それともこの“バジリスクの瞳”を探し出す試験は恒例なのか(つまり、現役の盗賊ギルドのメンバー達もみんな(長のラニックでさえ)この最終試験を受けたのか)。考えれば考えるほど不思議です…。

2005/07/06


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