スターストライダー


<スターストライダー(星を股にかける男)>とは…
 ローグトレーサー(悪漢追跡人)の中でも特に優秀な人物を指す。ローグトレーサーというのは、懸賞金のかかった犯罪者達を追跡する者の中でも、「追跡ビーム機構」から免許を与えられたハンターのことである。

 ローグトレーサーの主人公に、追跡ビーム機構からの情報が届いた。
 第一銀河連邦政府のゼリン大統領が、グロム人に誘拐された。グロム人は大統領の脳に記憶を読み取る装置を取り付けている。大統領の脳には遮蔽装置が施してあるが、その効果は今から48重力時間しかない。それを過ぎてしまうと、グロム人は銀河大統領の脳から防衛用の重要な記憶を読み取ってしまい、その記憶はたちまちのうちに敵国の手に渡ってしまうだろう。
 主人公は、これから始まる任務の内容や、遭遇することが予想される敵などの説明を順々に受けることになる。

 FFシリーズ27巻『スターストライダー』は、FFシリーズ初登場のルーク・シャープの作品です。
 内容としては、18巻『電脳破壊作戦』以来のSFものです。
 これまでのFFシリーズとは違い、今回の冒険の舞台はタイタンの世界ではなく地球のヨーロッバ諸国です。その証拠に、マドリッドやロンドン、パリ、更には400番で「アメリカン・エクスプレス」と実在の会社名まで登場します。ですから、かなり現実世界を想像しながらプレイすることができます。17巻『サイボーグを倒せ』にもヨーロッパやアメリカは出てきましたが、舞台そのものはタイタン・シティですので完全には現実世界に即していません。
 能力値は、他の冒険と同様技術点体力点、そして運点と普通に決めますが、今回はなんと「特別な指示を除き、各能力値は原点数を超えてはならない」という表記がありません!このことは、最初の1番で食糧を注文したときに分かります。まだ体力点が減っていない1番→203番で体力点+1ですから、間違いなく体力点原体力点を超えるわけです。この冒険に限っては、特に「原点数を超えてはならない」とは書いていませんので、ありがたく原点数を超えることにしましょう。この点に関しては『スターストライダー』がFFシリーズのデビュー戦という人の方が素直に受け入れると思います。ベテランプレイヤーですと「何も書いていないけれど原点数を超えたらダメなんだろうなあ」という先入観がどうしても出て来てしまうでしょう。
 あとは、恐怖点酸素点という新しい発想が出てきます。恐怖点が出てくるとは言っても、10巻『地獄の館』や25巻『ナイトメアキャッスル』のようなホラーものではなく、グロテスクな映像(大抵は幻影)に耐えられるかどうかという判定です。恐怖だめし運だめしと同じ要領で行いますが、運だめしと違い、今回の恐怖点は最後まで変化しません(ということは、恐怖点に関しては、最初にサイコロで決めるときに6が出れば問題なしか…)。酸素点は、酸素のない場所で使用します。酸素点がゼロになったら窒息死することは想像に難くはないと思います。
 そして、今回最も重要なのは時間点です。出発時は48点(グロム人が銀河大統領の脳から記憶を読み取るまであと48重力時間)ですが、時間点がゼロ以下になったらタイムオーバー、銀河大統領の脳に施してある遮蔽装置の効果がなくなり、グロム人が銀河大統領の脳から必要な記憶を読み出すのに成功したことを意味します。無論これは任務の失敗を意味します。結構減るんですよ、この時間点。ですが、必要な情報は時間をかけてでも収集したいものです。時間点の使い方がこの冒険の成否の大部分を握ると言っても過言ではないでしょう。
 この冒険そのものは、25巻『ナイトメアキャッスル』のようなあまり恐怖に満ちた描写はありません。強いて言うならば、249番に出て来るグロム人の頭からたくさんの蛇が這い出して来る映像くらいでしょうか。戦闘も、見るもおぞましいという敵は出てきません(強敵は出てきますが)。
 ちょっとした計算パズルも出てきており、これがまたグロム人の知能を示す演出としていい味を出しています。
 しかしその一方で不満な点もやはりあります。途中、生死を分かつ選択がいきなり出てくることが多いのが少し難点です。まあ、それもある程度避けられるようになっていますが。あと、400番のエンディングが少し短いのと、そのエンディングが395〜399番と見開きで同じページになってしまっているのが不満なところです。カットなどをうまく利用して400番だけを右ページに持ってくるという編集が出来ていればなあとも思います。400番を見ないようにする対策としては、付箋(ポストイット)などを使って400番を隠す方法もありますが、これも面倒ですねえ。
 ですが、こういった不満があっても、この『スターストライダー』は現実のヨーロッバを舞台にしているので結構馴染みやすいゲームブックだと思います。特にイギリス人には。我々の国日本では、これは輸入品(翻訳書)ですのでこれでヨーロッパ諸国の雰囲気をつかめるでしょう(?)。

 それにしても、ルーク・シャープは「長者番付第97位」だの「ウサギの皮剥ぎ職人第3見習い(30巻『悪霊の洞窟』)」だの、「背景」で細かい数字を設定するのが好きですね(笑)。特に素数を使っているので、背景の設定が本物に思えてきます。彼は細かい数字が好きなのでしょうか。

2005/07/03


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