サイボーグを倒せ


 当時、まだ実験段階であった遺伝子操作手術の人体実験に自ら提供した女性がいた。そして、そのときに彼女が産んだ子供こそがジーン・ラファイエットである。後にシルバークルセイダーと呼ばれる超能力を持った正義の守護戦士―そのシルバークルセイダーこそが主人公だ。シルバークルセイダーの正体は決して他人に知られてはならない。知られたら最後、これまで主人公に脅かされてきた、あるいは逮捕された犯罪者達が、主人公の家族や友人の命を狙うことは必至だからだ。
 シルバークルセイダーについての世間の噂は色々と錯綜している。怪力を持ち空も飛べる超人的な体力を持つと言う人もいるし、他人の心を読んだり操ったりする“エスパー”と言う人もいる。また、超越した工学的技術を持ち様々な超小型機械を操ると言う人もいるし、電撃を発生する力を持つと言う人もいる。いずれにしても、シルバークルセイダーが超能力を持った人物であるという噂が流れていることは確かだ。
 ある日、友人の<マリファナ>ジェリーが、ひとつの恐ろしい情報を探り出した。
 チタニウム・サイボーグの名で知られる『恐怖結社』(正式名称ヨーロッパ・アメリカ破壊連合、略称FEAR)のボス、ウラジミール・ユトシュスキーが手下の犯罪者にタイタン・シティに集まるように指示を出した。更に調査したところ、タイタン・シティをはじめとする西側諸国を破滅に追い込むための会議だということがわかった。まだ、開催時と開催場所は突き止めていないが、この会議が無事終了してしまったら最後、全世界は『恐怖結社』の支配下におかれてしまうことになる!
 また、ウラジミール・ユトシュスキーは、人間の能力を高める電子技術分野の専門家でもある。事実、彼の体の半分はチタニウム製の機械で出来ている。彼自身非常に危険な人物なのだ。
 文字通り恐怖の会議の開催時と開催場所を突き止め、何としても会議を中止させなくてはならない!

 久々の英ジャクソンの作品です。その名も『サイボーグを倒せ』です。
 この作品も、これまでの作品とはまた一味違っています。
 まず、主人公はいかなる敵であっても『逮捕するために弱らせる』だけで、殺してはいけないことになっています。もし犯罪者を殺してしまった場合、殺人罪に問われることこそないものの以下で述べる罰が科せられます。
 技術点体力点運点はこれまで通りですが、超能力によっては若干の修正があります。
 それから、今回は英雄点という点が設定されています。これは冒険の途中で使うものではなく、いわば「庶民のシルバークルセイダーへの評価点」と言ったところでしょうか。ですから、犯罪者を逮捕したり困っている人を助けたりすれば増えますが、逆に誤認逮捕をしたり困っている人がいるのに見て見ぬふりをしたりすれば当然英雄点は減らされます。犯罪者との戦闘はこれまでの戦闘方法と同じですが、犯罪者の体力点は1〜2点にすれば十分です。もし犯罪者の体力点ゼロにしてしまうと「犯罪者殺し」となり、罰として英雄点1点減点しなくてはなりません。
 そして、何よりもこの冒険の最大のポイントは、超能力です。
 主人公は、超体力思念力超技術電撃という4つの超能力のうちの1つを選択して『恐怖結社』に立ち向かいます。ですから、一度クリアしても別の超能力を選んで冒険を始めることができるのです。しかも、この4つの超能力でどれを選ぶかによって、手に入れるべき必要な手がかりも全く違ってきます。仮に、以前手に入れた手がかりでズルをしようとしても、そうは問屋が卸しません。各超能力に合った手がかりがあるからです。この辺はさすが英ジャクソン、きちんとインチキ対策を講じています。8巻『サソリ沼の迷路』の楽しみが3倍ならば、この『サイボーグを倒せ』は4倍楽しむことができるのです。4つの超能力での冒険を全てクリアして、初めて『サイボーグを倒せ』を完全にクリアしたと言えるでしょう。
 で、実際にプレイした感想を述べることにします。
 確かに、4つの超能力のいずれを選択してもクリアはできます。しかし、4つの超能力の間でも難易度にだいぶ差があります。
 私は最初に思念力を選択しましたが、これは4つの超能力の中で一番難しいです。選んだ超能力によっては、関わったら即デッドエンドという事件も多いのですが、それが一番多いのがこの思念力です。<ドクター死神><虐殺鬼>に遭った瞬間デッドエンドというのはどうも合点がいきません。思念力でプレイされた方なら分かると思いますが、思念力ですとどうしても最後の英雄点+6の事件を解決できません。他の3つの超能力ならば解決できます。しかも、使うたびに体力点2を失うのも大きいです。この冒険には食糧などが出てこないので、思念力だと(あと電撃も)体力点が満タンの状態でウラジミール・ユトシュスキーと戦うことはできません。
 最初に思念力を選んだだけに、どうしても思念力への思い入れが強いのですが、英ジャクソンもテストプレイまではしていないな、と感じられます。それとも発刊時期までに間に合わなかったのでしょうか。いずれにせよ思念力が一番難しいと(少なくとも私は)思います。
 初心者には超体力をお薦めします。スーパーマン(あるいはパーマン)の如く、力は6600倍、時速119kmで空を飛ぶことができます(笑)し、最初の能力値設定のサイコロの目に関わらず技術点13の状態で始められます。よほどサイコロ運が悪くない限り、犯罪者との戦闘はほとんど問題ないと思います。一番早く迎えるデッドエンドが超体力(376番)ですが、この番号に到着していること自体「サイコロ運が恐ろしく悪い」という証拠です。376番に行く人はあまりいないと思いますが…まさかいらっしゃるとか?一番進めやすいのがこの超体力でしょう。
 次は電撃でしょうか。1回使うごとに体力点2を失いますが、思念力のように巻き込まれたら即アウトという事件はありません。関わるとデッドエンドという事件はありますが、これも「電撃真の道」さえ通っていれば回避できるので大丈夫です。
 超技術は、4つの超能力の中で唯一「冒頭で必ず手に入れるべき手がかりが存在しない」超能力です。なおかつ、唯一「巻き込まれたり関わったりしても即デッドエンドになる事件が存在しない」超能力です。即座にデッドエンドとなる事件がないので色々な事件に積極的に関わることができます。しかしその分幅広いのも事実です。この超能力を選ぶなら、最初の原技術点を決める際のサイコロで4以上が出ないと(つまり原技術点が10点以上ないと)厳しいかと思います。幅がある分、手がかりも色々な場所に散らばっています。
 やはり一番難しいのが思念力だと思います。しかし逆の言い方をすると、一番難しい思念力でクリアしたらすごいということです。同じ冒険でも技術点12でクリアするよりも技術点7でクリアした方がすごいですからねえ。
 項目数も従来の一割増(440項目)です。しかも、事件と事件のつながり方の範囲も広いので、500〜600項目以上あるような気がします。十分プレイし応えのある作品です。

 …それにしても、タイタン・シティ警察署の連中は一体何をしているのでしょう。
 440番に到着した暁には、報奨金としてタイタン・シティ警察の連中に支払う給料の中から半分(以上)をシルバークルセイダーに支払うべきでしょう。警察だけでは、どんなに頑張ってもせいぜい292番行きが限度ですからねえ。

2005/06/11


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