宇宙の連邦捜査官
今、アレフ・シグニ星系から不法な麻薬セイトフィル-
D
が大量に流出している。
アレフ・シグニ星系政府はこの麻薬取締法違反に対する処理に失敗した。
そこで、連邦犯罪局はこの麻薬の出所を突き止め、恐るべき麻薬組織を一掃するために上級捜査官である主人公をアレフ・シグニ星系に送り込むことにした。
アレフ・シグニ星系当局は信用できないので、主人公はセールスマンのふりをしてアレフ・シグニ星系に潜り込むことになる…。
12巻『宇宙の暗殺者』と同じく、アンドルー・チャップマンの作品です。今回もSFものです。
12巻では宇宙船内でしたが、今回は1つの星系全体での冒険で、少し範囲が広がります。
宇宙が冒険の舞台となると、下手をすると収拾がつかなくなる虞があります(宇宙は広いですからねえ)。かと言って、行動範囲を狭めてしまうと、せっかくの宇宙という広がりが「狭く」なってしまいます。にも関わらず、この作品は見事にその両方の中庸を取っています。宇宙らしく「広がり」を現し、なおかついくつかの中継点を上手に配置して収拾がつくようにしています。
しかし、12巻『宇宙の暗殺者』で少し述べた通り、この『宇宙の連邦捜査官』も最後のエンディングがあっけなさ過ぎる気がします。
この冒険には2つの“HAPPY END”(任務の成功)があります。これは「任務を遂行する方法は1つではない」という意味でしょうが、そのつくりが少し甘いように感じられます。400番(最終番号)の“HAPPY END”はたったの2行しかありません。「え〜っ、『宇宙の暗殺者』でもそうだったけど、これはあまりにも味気なさ過ぎるよ〜。」と思われた方もあったことでしょう(実は、私がその口です)。もう1つの“HAPPY END”はケサールの核反応制御室の鍵を持って制御室に入り込み、惑星全体を爆破させて文字通り“全滅”させるもの(391番)ですが、これも制御室に入るだけで自動的に「おめでとう。君の任務は成功した。」となります。…ちっともめでたくない!せめて、途中の脱走劇の1つくらいは欲しかったところです。(それに惑星ケサールにいる罪のない住民も全員道連れにしてしまうことになります。悪いのは「ブラスター」・バベットとその関係者だけのはずです。)
「熱線銃での戦闘」や「宇宙船どうしの戦闘」、そしてスマート・ミサイルなど、宇宙空間や近代兵器を盛り込んだルールが良かっただけに、少し残念なところでもあります。
…ところで、『宇宙の連邦捜査官』のカバー絵が
プームチャッカー
(第8巻『サソリ沼の迷路』に出てくる<中立>の依頼主)に似ていると思ったのは私だけでしょうか(笑)。
2005/06/08
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