地獄の館


 翌日の約束を果たすために、主人公は雨の夜車を走らせていました。しかし、途中で「老人らしき誰か」が急に目の前に現れ、それを避けようとして車を溝に入れてしまいます。慌てて車を降りて確かめたものの、その「老人らしき姿」はどこにも見当たりませんでした。しかも、車の鍵をいくら回してもエンジンはかからず、今夜は溝から車を出せそうにありません。
 誰かに助けてもらおうとあたりを見回してみると…ありました、近くに屋敷がありました。外は暴風雨が吹き荒れていますが、構わず屋敷に向かいます。電話くらいは貸してもらえるでしょう。そう思い、屋敷に向かったのですが、なんとこの屋敷は悪名高い“地獄の館”だったのです!
 この地獄の館に比べれば、外で吹き荒れる暴風雨などほんの小雨に過ぎません。これまで、多くの犠牲者が主人公のような境遇でこの屋敷に訪れ、命を落としました。未だ嘗て誰一人としてこの地獄の館から生還した者がいないのです。
 そうとは知らずに、主人公は“地獄の館”へ入っていきます。主人公にとって一生忘れることのできない夜の始まりです…。

 久しぶりの英ジャクソンの作品です。
 この『地獄の館』も、これまでにはないアイデアがあります。
 これまでの主人公の冒険は、ある程度自分で予測していた状態から始めるものでした(『さまよえる宇宙船』は「緊急事態」でしたが、宇宙旅行に緊急事態はつきものという解釈から「予測していた事態」に属するとします)。
 しかし、この『地獄の館』は違います。
 この冒険を始める時点で主人公は、まさか“地獄の館”で危険な目に遭うなどとは、それどころか車が故障するなどとは予測もしていませんでした。
 まさに不測の事態、緊急事態からの冒険の始まりです。「不測の事態」から冒険を始めるわけですから、当然ながら装備も「不足の状態」(←なんというシャレだ…)から始まります。
 従来のFFシリーズならば、最低でも武器や食糧、飲み薬くらいは(あるいは冒険によっては金貨も)持っています。それが、この『地獄の館』ではまさに着の身着のままの状態で始めることになるのです(強いて言えば、せいぜい「車の鍵」くらいでしょうが、これをなくしたら「直結」の方法を知らない限り車を走らせることはできません)。
 ですから、開始時点の技術点は、素手であることを考慮して原技術点の3点引きとなります。つまり原技術点が12点あっても、開始時点では9点になってしまうのです。もしも原技術点が7だったら…そうです。たったの4点です!
 これだけでも難易度が増すというのに、更に厄介なルールを設けています。
 それが恐怖点なのです。これは、技術点体力点、そして運点とは逆に増やしてはいけない点数なのです。恐怖限界点というのが定められていて、恐怖点恐怖限界点となった時点で、主人公はもはや恐怖に耐え切れずショック死します(無論これは体力点が0以下になるのと同じことを意味します)。そしてこの恐怖点、先程「増やすな」と申し上げましたが結構増えるのです。必ず増えるクリアポイント(クリアするのに必要な道筋)も無論あります。『地獄の館』での一番多い死に方は、恐らく恐怖点での死でしょう。
 それでは、各点数だけに気をつけていれば平気かと言うと、もちろん平気ではありません。
 クリアするのに必要なアイテムがあり、それを手に入れるための手がかりやアイテムがあり、そしてそのまた手がかりやアイテムがあり…と、二段、三段構えの構造になっているのです。
 総項目数400の中でこれだけの構造を作るとは、さすがは英ジャクソン。
 そして、ストーリー内容の方も充実しています。
 冒頭は、暴風雨を避けるために屋敷の中に転がり込みます。そして屋敷で迎えてくれた伯爵と執事、しゃべる壁画、寝室への案内(場合によっては気絶させられて寝室に監禁されることもありますが)、そこから繰り広げられる数々の冒険…。
 最後の戦闘も、「ついにここまで来たか」という達成感をもたらしてくれます。
 この『地獄の館』、難易度こそ高いもののこれまでのFFシリーズにはない要素も取り入れた傑作と言えるでしょう…たった二つの点を除いては!
 実は、『地獄の館』には致命的なバグと思われる箇所が二箇所あります。これについては、次の更新で述べることにします。

 それにしても、近年は携帯電話を持っている人が多いので、もし主人公が携帯電話を持っていたらこの『地獄の館』での冒険は起こらなかったかもしれませんね。…いや、待てよ。携帯電話の電波すら通じない地域と想定すれば起こりうるか。
 この辺りも、発売当時からの「時代の流れ」がつかみ取れます(笑)。

2005/05/31


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