雪の魔女の洞窟


 主人公は、ビッグ・ジム・サンという商人に護衛として雇われていました。氷指山脈の麓にある前哨砦まで、ビッグ・ジムの隊商の荷物を無事に運び、取引をして無事に持ち帰るのが今の主人公の仕事です。しかし、行きの目的地である前哨砦が何者かによって襲われていました。
 前哨砦を襲ったのは大きな怪物でした。この怪物を仕留めるようにビッグ・ジムに依頼され、金貨50枚で承諾します。翌朝、早々と怪物を探しに氷指山脈に赴きます。
 そして、氷指山脈で前哨砦を襲った犯人を発見します。それは雪男でした。しかし発見したのは雪男だけではありませんでした。雪男に瀕死の重傷を負わせられた猟師もいました。どうにか雪男を倒し、猟師の元に駆け寄りますが、とても彼を助けられそうにありません。猟師が死に際に<水晶の洞窟>と、その主人である雪の魔女のことを話します。<水晶の洞窟>の主人である雪の魔女が世界を征服する企てを試みているとのことです。何としてもそれを阻止するために、雪の魔女を殺してくれと猟師は主人公に託します。雪の魔女の洞窟には沢山の財宝があるはずだから、それで十分この任務の報酬になるであろうとのことでした。この任務を託した後、猟師は息を引き取ります。
 ここで、ビッグ・ジムのところへ戻って雪男を倒した証拠を持って行けば金貨50枚を受け取ることができます(ちなみに、この選択をした場合はもちろん今回の冒険はここで終わりです!)。しかし、金貨50枚よりももっと価値のある財宝が手に入るであろう、そして何よりも世界を征服せしめんとする雪の魔女を放ってはおけないので、主人公は<水晶の洞窟>への冒険に出発します。

 FFシリーズ第9巻『雪の魔女の洞窟』は、元々「ウォーロック(WarLock)」というゲーム雑誌(社会思想社)に掲載されていた短編の冒険ものでした。それが、新たにFFシリーズのゲームブックとして刊行することになり、雪の魔女の洞窟を脱出した後の冒険を加筆してFFシリーズ9巻目の作品となったのです。そして、最後の意外な結末も見逃せません。この“意外な結末”というフレーズは、FFシリーズ第32巻『奈落の帝王』に書かれていますが、私個人の感想としては9巻目のこの作品にも“意外な結末”というフレーズが似つかわしいと思います。
 最初のうちは、前哨砦を襲った怪物を倒してビッグ・ジムの護衛を立派に勤め上げるのが目的のような気がします。しかし、猟師の死に際の言葉より、今度は雪の魔女を討伐するのが目的に変わります。そして、雪の魔女を倒した後さあ脱出だと思っていたところ、奴隷だったエルフの<赤速>とドワーフの<スタブ>が加わります。彼らと一緒に<水晶の洞窟>から脱出した後、赤速とスタブの故郷へ凱旋しますが、スタブは自分の故郷が襲撃に遭い『運命の森』で出てきた“ストーンブリッジのハンマー”を取り返す旅にすぐに出てしまいます。主人公は、赤速と二人きりになるのですが、ここで赤速が<水晶の洞窟>にあった羊皮紙のことをカミングアウトします。洞窟を抜ける際に赤速が読んだ羊皮紙の内容とは、なんと<死の呪文>だったのです。雪の魔女の最後の枷を打ち破るべく、主人公は<癒し手>と呼ばれる人物を探す冒険の旅に出ます。
 …最初はビッグ・ジムの護衛だったのが、最後の意外な結末をどうして予測できたのでしょうか。
 この辺りは、キャンペーンゲームの醍醐味だと思います。
 この『雪の魔女の洞窟』には、これまでのリビングストン作品(1巻、3巻、5巻、6巻、7巻)のうち実に4巻分出てきています。
 まず、<水晶の洞窟>を出てすぐ(104番)に「ファング」「迷宮探険競技」という言葉が出てきます。これは6巻『死のワナの地下迷宮』のことです。それから<大足>とスタブの会話(213番)は、まさしく3巻『運命の森』の背景そのものです。最後の癒し手を探す旅で赤速の兄<秦皮(とねりこ)>と出会えば(100番)「ニコデマス」という人物名を聞く事ができます。ニコデマスは5巻『盗賊都市』に登場しました。そして、最後の<死の呪文>を打ち破る場所は「火吹山」です。これは言わずもがなですね。1巻『火吹山の魔法使い』です。
 こうしてみると、この作品は、過去の冒険のダイジェストのようにも見受けられます。
 ひょっとすると、後の『モンスター事典』や『タイタン』といったファイティング・ファンタジーの世界の読み物が本として出るようになった火付け役は、この『雪の魔女の洞窟』だったのかもしれませんね。

 私が主人公の立場でこれをクリアした後は…もちろん、世界の果てまでビッグ・ジム・サンを探し回って金貨50枚を請求します(しかし、旅費が金貨50枚を超えると意味がなくなりますが)。前金制度だったら良かったのになあ(笑)。

2005/05/30


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