死のワナの地下迷宮


 『死のワナの地下迷宮』…それは、別名「決死行」とも呼ばれるファングの街の迷宮探険競技のことである。ファングの支配者サカムビット公爵が凝りに凝って作成した地下迷宮で、毎年5月1日にファングの街で開催されるファング最大のイベントとなっている。迷宮探険競技の勝者には、名誉の印である月桂冠と、副賞として金貨一万枚が贈呈される。
 この迷宮探険競技には毎年数名の腕自慢が参加するが、勝者はたった一人しかいない。そして、勝者にならないとこの迷宮を生きて出ることは叶わないのである。無論勝者が出るとは限らない―事実、勝者になった者は未だ嘗て誰一人としていない。
 主人公は、自分の腕を試すために、そして名声を上げるために(迷宮探険競技の難易度を示す一例となるために)この「決死行」に志願した。他の5人のライバルと共に、死のワナの地下迷宮に挑む!

 FFシリーズ第6巻は『死のワナの地下迷宮』です。
 地下迷宮なのですが、さまようわけではなく、これまでと同じく一方通行の冒険です。主人公は、途中様々な死のワナをかいくぐりながら、迷宮の奥へと進んでいきます。
 冒険では、他のライバルには一通り会うことができます。中でも、途中ライバルの一人であるスロムと共に行う場面はなかなか秀逸なつくりになっています。途中のドワーフとノームの競技監督の関門も、だれないように配慮されています。この部分がひとつのセーブポイントとなっているでしょう。
 前回の『盗賊都市』の終わりにちょこっと述べた“毒のアイビー”も出てきます。姉弟揃って地獄で再会させてやっても構わなかったのですが、姉の方は言葉巧みにうまく騙してスツールで脳天を一撃するだけで許してやりました(笑)。

 もし、競技の「敗者」となるとどうなるか。
 途中で、過去の敗者に出会った人ならばわかると思いますが、競技監督から死刑か無期懲役の究極の選択を迫られます。生きて出られると地下迷宮の秘密が外部に漏れてしまうからという考えからのようです。この辺りノーチラス号に似ているような気がしないでもありませんね。それにしても、競技監督などサカムビット公の重鎮は外に出ることを許されているのでしょうか。その辺も不思議と言えば不思議です。
 私がこのゲームブックで残念だと思ったところは、382番の白髪の老人の問いです。

「この男の重さは、100ポンドプラス彼の体重の半分だ。彼の体重はいくらだと思うかね?」

 この問題は、三択式になっています。これが非常に残念です。ここで

 答えがわかったら彼の体重(ポンド)の項目番号進め
 答えが間違っていたり(つまり、ここと話がつながっていなかったり)分からなかったりした場合は85進め

とすれば各進み先を見て当たりかはずれかを調べるというズルもできないし、項目数も2項目節約できるので良かったと思います(この点は、21巻『迷宮探険競技』で改善されています)。
 また、このゲームブックは体力点運点よりもまず技術点が大切です。「ゲームブックの楽しみ方」(安田均著・社会思想社)にもあるように、(他の作品でもそうですが、この作品は特に)技術点が7〜8点では大抵途中の敵に殺されて終わりでしょう。9点でもかなりきつめです。この冒険は“腕自慢”の主人公が参加する設定ですから、技術点が10以上の冒険者だろうと考えても良いでしょう。なので、最初の原技術点を決める際には、サイコロを1個振って1〜2なら10点、3〜4なら11点、5〜6なら12点としても良いのではないでしょうか。尤も原技術点が7点でこの冒険をクリアしたら、それはそれですごいと思います。
 ちなみに、先程も少しだけ述べましたがこの6巻の続編として21巻『迷宮探険競技』というものがあります。舞台は同じくファングの街です。この辺も、同じものを二度書くことを厭わないリビングストンらしい発想だと思います。しかし、21巻では主人公は「奴隷」としてスタートします。詳しくは21巻の項目で述べることにします。

 ところで、このゲームブックは毎年5月1日に行うとより臨場感が増すと思うのは、私だけでしょうか。

2005/05/27



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