運命の森


 『運命の森』は、ファイティングファンタジーシリーズ初のイアン・リビングストン氏単独の作品です。
 ダークウッドの森のどこかにある、奪われた“ストーンブリッジのハンマー”を探し出すというビッグレッグの任務を引き継ぎます。しかし、魔法使いヤズトロモから、このハンマーは頭と柄が分離されてしまい、その両方を見つけなくてはならないと聞かされます。何としても、ハンマーの頭と柄の両方を手に入れて、ドワーフの王ジリブランに渡さなくてはなりません。

 全般的にイアン・リビングストン氏の作品は、謎解きの要素が結構含まれているジャクソン氏の作品に比べて「正しいルート」を通っているかどうかという要素が強いように思います。結構単純なつくりですが、では内容も単純かと言うと決してそうではなく、きちんとした物語が背景としてあり、そこから様々な経緯を経て読者自身で作り上げるといったものが含まれています(まあ、これはどのゲームブックでも同じなんですが)。
 ところで、このゲームブックは非常に親切なつくりをしています。どこが親切かと言いますと、このゲームブックは何度でもやり直しが効くのです。
 ダークウッドの森を出てストーンブリッジに着くまでにハンマーの頭と柄の両方を手に入れて初めてクリアとなります。では、どちらかでも欠けていたらどうなるのでしょうか?多くのFFシリーズでは、その時点で「君の任務は失敗に終わった」となってデッドエンドになります。しかし、この『運命の森』は違います。同じキャラクターでもう一度ヤズトロモの塔に舞い戻り、魔法の品物を買い揃えるところからやり直しが出来るのです。しかも、最初に始めたときよりも幾分か裕福になっている可能性も十分ありますし、地図などを描いていれば前回の知識を参考にして冒険を進められます。おまけに『運命の森』のデッドエンドパラグラフはたったの三箇所しかありませんので、一人分のキャラクターのプレイだけで、ダークウッドの森の完全な地図が描けることも十分可能なのです。
 では、前に手に入れた品物がもう一度出てきたら…。重要なアイテム(ハンマーの頭や柄など)ならばもう何もないものとして、そうでない普通のアイテム(金貨など)ならばまた復活している、とすればよいのです。あるいは「一度手に入れた品物はもうないはずだから全部無視しよう」という解釈でもいいわけです(むしろこっちの解釈の方が一般的だと思います)。
 巻末の「訳者あとがき」にもありましたが、ある程度自分なりのルールを考えてプレイすると、より一層面白みが増します。今の小中学生の「活字離れ」を解消するにはFFシリーズなどはうってつけ(?)の作品だと思います。

2005/05/23


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