漫画や歌謡曲に潜む振り仮名の罠


 昔からあることだが、漫画や歌謡曲に正しくない振り仮名を振ってあることがよくある。例えば「理由」に「わけ」と振ったり、「未来」に「あした(あす)」と振ったり、「本気」に「マジ」と振ったり、「決着」に「けり()」と振ったりする。その場の雰囲気というものはあるかもしれないが、こういう振り仮名を見ると私は身の毛がよだつ。日本人自らの手で日本語をできなくさせてしまっているからだ。もっとひどいものになると、某長期連載漫画にあった、カタカナにカタカナの仮名をふっている事例もある。「ハサミ」に「シザー」と振っているのだ。これでは意味がない。そもそも、仮名というものは、漢字やアルファベット表記などの読み方を知らないと読めないものに対してひらがなで振るものである。カタカナにカタカナで振っては何の意味もなさない。ならば、最初から「シザー」と書くべきである。
 毎年、年末になると「新語・流行語大賞」というものがあるが、これこそが諸悪の根源だと私は思っている。正しくない表現は正しくないのである。尤も、もともと誤用であったものが、間違って使う人が多くなったため慣用化するという事態もたまに起こるのだが、これも数の攻めによる結果である。まさに「無理が通れば道理が引っ込む」のである。
 これらの正しくない漫画や歌謡曲の振り仮名や日本語の読みを子どもに植えつけさせてしまうと、その子どもは間違った日本語を覚えてしまう。否、国語の教員ですらそのような言葉を使ってしまっているのだから目も当てられない。
 漫画や歌謡曲そのものが悪いとは言わないが、漫画家や作詞家に問題があるとは思っている。漫画や歌謡曲にはそのような振り仮名の罠が潜んでいることを前提で読んだり聞いたりすることが必要である。

 ()「けり」を漢字で表記すると「」です(反転させると読めます)。

2017/03/13


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