自分の教えた漢字しか使わせない教師たちへ


 私が小学生の国語(日本語)の授業を担当したとき、小学生に「この漢字を使ってもいい?」という質問をされたことがある。勿論、私は使ってもいいという返答をしたが、同時になぜこの子は私にそのような質問をしたのだろうか疑問に思った。小学生に聞き返したところ、なんと「学校で習っていない漢字を使うと先生に叱られるから」という答えが返ってきたのである!
 なぜ、小学生はまだ習っていない漢字を使ってはいけないのか。そこを論理的に説明してもらいたいところである。
 上級生の漢字はまだ覚えるには早い、まずは習った漢字をしっかり書く、など言い訳がましいことだろうが、いずれにせよ「自分の知らない漢字を生徒に使われたくない」というのが本音であろう。
 自分の教えた漢字しか使わせない教師というのは、概して臆病者である。同時に漢字を知らない者でもある。まだ習っていない漢字を使わせないということは、小学生に漢字を覚えさせないということである。自分の漢字の知識のなさを小学生に知られたくないがために、そのような手段に出るのだろうか。ならば、救いようのない愚か者である。自分の教えた漢字しか使わせない手段に出る前に、自分の漢字の知識のなさを認識すべきであろう。
 教師と雖も人間、ならば間違えることもあれば知らないこともある。知らなければ素直に「知らない」と言えばよいものを、変に理屈を捏ねたり不当な力で生徒を黙らせたりして自分を正当化するから、おかしなことになるのである。  私の周りの生徒は私が漢字検定で準1級を取得しているのを知っているので、私に対してはわざと難しい漢字を知っているかどうか試してくる小学生もいる。大抵は答えられるが、答えられないときもある。そのときは、あっさり知らないことを認め、その日の夜にこっそりと辞書で意味を調べたりもする。
 「先生でも知らないことがあるのか」と思われるか「先生のくせに知らないのか」と思われるかは、理屈ではなく偏に普段からの信頼度が物を言う。「上から目線」でいつも生徒に接していると、ほんのちょっとした間違いでも「先生のくせに知らないのか」と生徒に思われてしまうのである。

2010/07/01


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