教師は毎年、生徒は一生


 大多数の職種は、「新人」よりも「ベテラン」の方が安心であり、名実ともに「新人」より上かも知れない。確かに、そういった見方をするのが普通であろう。しかし、こと教師に限って言うと、実はこのことは非常に危険なことなのである。
 ベテラン、殊に教師歴を多く積んだ教師であればあるほど陥る罠がある。それは「例年のこと」と思いがちになるということだ。
 なぜなら、今の年度の今の学年は、各生徒にとって一生にたった一度きりだからである。『フォボス内乱』でも少し述べたが、同じ生徒は二度と現れない。しかし、受験は毎年行われる。ベテランになるとこの大事な点を見落としがちになる。生徒の受験に関する悩みを「また今年も来たか」という態度で接すればどういう結果になるか。それはベテラン教師ならばわかるはずである。
 「新人」の頃は何もかもが新しいので、「例年」などと思う心配はない。しかし、「ベテラン」になればなるほど「またこの時期が来たか」と思ってしまう。
 どんなものにも「初年度」はある。この「初年度」に様々な経験をした者、特に「初年度」でなければできない経験をした者の勝ちだと思う。最初からトントン拍子に行くと、後で思わぬところからしっぺ返しを食う。しかも、そのツケは、これまで失敗しなかった分を高い利子をつけて支払わなくてはならないのである。

2009/02/28


直前のページに戻る

トップに戻る


(C)批判屋 管理人の許可なく本ホームページの内容を転載及び複写することを禁じます。