よく使われる言葉は使いやすい形に変わる


 私が一応「日本語教育研究所」という研究機関に所属して3年近く経ちます。
 今年の12月1日に開催された研究発表会では、また興味深い研究内容が発表されました。
 特別講演としては、「金田一京助博士記念賞」を受賞された先生がさまざまな話をしてくださいました。「これは間違いだ」で終わってしまうのではなく「これは本来の字体としては誤りだが、個人的に使っている漢字―個人文字だ」という発想がさまざまなことを得られるのだということを知りました。「よく使われるものは略される」そうです。他にも研究発表があり、これもすばらしいお話を聴かせてもらいました。一つは世相を諷刺する内容で、意味を全く取り違えていたり、慣用句の表現としての正確さを欠いたりと、かなり日本語の意味が変わってきていると改めて痛感させられました。また、もう一つは元々の訓読みにはない読み方に変わる「転音(てんおん)」についての研究内容でした(例:風(かぜ)→風穴(かあな))。
 今回の研修会においての共通点は「よく使われる言葉は使いやすい形に変わる」ということです。例えば、「虫」や「糸」は、本来(旧字体では)それぞれ「蟲」「絲」と書きます。しかし、現代は一つずつしか書きません。よく使われる字は略される、ということなのですね。慣用表現の誤用も多勢に無勢で、誤用が「市民権」を得てしまっているものも少なくありません(例えば“独場(どくだんじょう)”は本来“独場(どくせんじょう)”が正しい)。また、転音が起こる最大の理由は「言いやすいから」なのです(これは英単語の単数形→複数形の変化にもあてはまる)。
 研究発表会の後の懇親会でも、漢字検定を広めようという話で締め括ったのですが、私個人としては「後顧の憂いなく広められる立場」(つまり1級)になってからにしたいと思います(あと18点…)。

1973(昭和48)年から年1度授与されている賞。日本語・日本文化の研究者として最高の名誉と言われている。

2007/12/04

2011年4月より「漢検生涯学習ネットワーク」と改称(2011/02/01)


直前のページに戻る

トップに戻る


(C)批判屋 管理人の許可なく本ホームページの内容を転載及び複写することを禁じます。