実体験のある素人>実体験のないプロ


 プロフェッショナル―略してプロと、素人あるいはアマチュア(愛好家)、一般的には、実力はプロの方が上である。それもそのはず、プロはそれで生計を立てているのだから。プロは、素人の出せる最大の力をいつでも発揮するものである。しかし、医学に関しては一概にそうとも言えないことがある。医者よりも患者の方が症状を正確に把握していることも少なくない。
 10年以上前、私は精神的な疲労によりヘルペスを患った。単純疱疹やカポジー水痘様発疹症とも呼ばれるこの病気はウイルス性のもので、顔にいくつもの発疹が出るのが特徴である。このウイルスを殲滅することは現代医学では不可能だが、抗生物質で発病を抑えることはできる。
 ある日、私は顔に違和感を覚え、かかりつけの皮膚科に行った。以前も同じような違和感からヘルペスに発展したことがあり、その経験から先手を打とうと思ったのだ。だが、その皮膚科医は「ヘルペスではない」と診断したのだ。翌日、セカンドオピニオンとして別の医者にも診てもらったが、やはり「ヘルペスではない」と診断された。2人の医者が「違う」と言うのだからヘルペスではないのだろうと一時は思った。一応薬を処方してもらったものの、一向に良くならない。そして、2日後の夜、ついに私の恐れていたことが現実のものになった。――やはりヘルペスだった。私の違和感は間違ってはいなかったのだ。その翌朝、“サードオピニオン”まで頼り、ヘルペスと判明した。三人目の医者が言うには、ヘルペスは自覚症状(=私の感じた違和感)から半日くらい遅れて発病することが多い、とのことだった。私が2人の医者に診てもらったときは、まだヘルペスの症状が表面的にはなかったということだが、結果的に2人の医者が誤診をしてしまったのである。私もある程度医者を信じて病院に行くのだが、実体験がない医者というものが如何に“誤診”をするかを思い知ったときでもあった。私は医学的には全くの素人だが、自分のかかった病気に関しては、自覚症状などを正確に把握している。その患者の自覚症状の体験を絶対に軽視してはいけないのである。
 実体験のある素人の感覚は、時に実体験のないプロを凌駕する。もし、これを読んでいるあなたが医学系の仕事に就いているのであれば、今日からでも是非患者の訴えに耳を傾けてほしい。医者のあなたがかかったことのない病気に関する知識は、あなたよりもその病気にかかっている患者の方が上なのだ。

2015/07/07


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