信頼度×30<<不信度×1


 彼女は、小学校5年生から塾に通い始めた。中学受験を目指すほどではなかったが、小学校の勉強にプラスして塾の勉強を加え、高校受験のことも見据えた長期の計画であったと言えよう。
 しかし、中学校3年生の12月、彼女はその塾をやめることとなった。表向きの理由は「学習効果が上がらない」ことだったが、真の理由は、教室長に嫌気が差したからだ。その教室長は彼女が中学校3年生の7月のときに突如新しく来たのだが、ともかく生徒をほめなかった。たとえ、ほめる要素が99%あってもそれらを全て無視し、至らなかった1%を徹底的に論うような輩だったのだ。おまけに、生徒に対する侮辱ともとれる発言を日常茶飯事的にしていたのだ。生徒に対するほんの冗談と思っていたのは教室長だけで、周りの皆は――他の講師の先生も、十分過ぎるほど気づいていたのだった。
 小学校5年生からの付き合いである講師の先生は、彼女の誠実さ、勤勉さを十二分に承知していた。その誠実さ、勤勉さが今の彼女の成績を構築していたことも重々承知だった。そして、中学校3年生の11月になって成績が思うように伸びなくなった頃に、彼女の焦りや不安感を取り去ろうとした。しかし、できなかった。教室長が、講師の先生の言葉を掻き消すくらいにしつこく「こんな成績ではダメだ」を連発していたからである。
 まさかこんな結果になろうとは、彼女自身思ってもみなかったであろう。どのような結果であれ、小学校5年生から通い続けてきた塾に通い、そして卒業していく。それが彼女の何よりの願いだったに違いない。しかし、周りの状況も彼女の性格も碌に把握していなかった教室長の浅薄な言動が2ヶ月近く続き、4年6ヶ月の信頼を見事に崩したのであった。講師の読みとしては、最後まで誠実で勤勉な彼女なら、この12月から翌年の2月までの間に挽回し、十分間に合うというものだった。
 4年6ヶ月――54ヶ月間の信頼がわずか2ヶ月足らず――54日間で崩れ去るとは。
 このような身勝手な輩が教室長では、もはやこの塾も長くはない……他の講師達は例外なくそう確信していた…。


※ この話は、批判屋管理人のALADDINが事実を基にして一部脚色したものです。9割以上はノンフィクション(実話)だと思ってくださって結構です。

2010/12/31


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