暗黒の11月―『批判屋』のもう一つの由来―


 時は遡ること20世紀の末頃。そこに、1人の青年がいた。
 その青年は、ある1人の女性に恋をした。それは、彼にとっての初恋だった。
 幾度となくその女性に近づくことには成功したが、どうしても思いを打ち明けることはできなかった。しかし、10月30日、思い切ってその女性に思いを打ち明けた。返事はいくらでも待つ。そんな自分に都合の良いような感じで思いを伝えた―。
 返事は、翌日に来た。……それは死刑宣告であった。
 その理由としては、今彼女は誰とも付き合う気はないし、どうしても越えられない壁があるから無理だということだった。そのとき、青年は何を言ったのかも覚えていない。「わかりました」とでも言ったのだろうか。
 しかし、11月に入ってから、青年は知るべきではないことを知る運命になる。  既に、彼女は誰かとのパートナーとなっていたのだ。そして、そのパートナーとは、青年とさほど変わらぬ壁を行き来していたのだ。―青年は、心身ともに打ちのめされていった。そして、青年が所期の目的を達成できなかったことは伝染病の如く広まって行ったのだった。無論、それを広めたのはその女性であることは言うまでもない…。

 それ以来、青年は「交際を断った女」に対し、譬えようもないほどの偏見を持つようになった。周りからチヤホヤされる女性の良いところは無視し, 『欠点探し』ばかりをするようになった。そして、その『欠点探し』の技術は恐ろしい程研ぎ澄まされて行くのであった。
 21世紀を迎えた今日、その青年は『批判屋』と呼ばれるようになった。今思えば、青年が『批判屋』になったきっかけはあの頃からかも知れない。
 少なくとも、努力が報われるまで――あの苦い思い出を帳消しにするような女性と巡り会うまで、青年は『批判屋』を続けて行くであろう。
 たとえ何が起ころうとも…。

2005/11/01


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